【過敏性腸症候群ガス型】ゲップが出る・出ない、おならが出る・溜まる|4つのタイプで分類する方法

【過敏性腸症候群ガス型】ゲップとおならの違いは?|木もれび鍼灸院 消化器

この記事の結論

ゲップは主に上部(喉・胃)で空気が滞ることで、おならは下部(腸)でガスが増えたり出やすくなることで起こり、症状が出ている場所が違います。過敏性腸症候群ガス型は、この「空気の通り道のどこに問題があるか」によって大きく4つのタイプに分けて考えることができ、多くの場合、背景に横隔膜の過緊張が関わっています。

この記事の対象者
ゲップやおならの回数・量が気になり、病院や整体で「原因不明」と言われた方向けの記事です。すでにR-CPD(ゲップが出せない状態)や機能性ディスペプシアと診断されている方は、それぞれの症状ページもあわせてご覧ください。逆にゲップやおならを意図的に「止めたい」場面の対処法をお探しの方は、後述のFAQをご覧ください。

ゲップとおならは何が違うのか?4つのタイプで見る

過敏性腸症候群ガス型と一括りに呼ばれる症状は、当院ではガスが「上から出るか・下から出るか」「出すぎるか・出せないか」という2つの軸で、次の4タイプに整理しています。

タイプ状態関連する概念
A:ゲップ過多型ゲップが上から出すぎる呑気症(空気嚥下症)
B:ゲップ不全型ゲップが出したくても出ない逆行性輪状咽頭筋機能不全(R-CPD)
C:おなら型おならが下から出すぎるガス型IBS、SIBO(小腸内細菌増殖症)疑い
D:膨満型出したくても下から出せず溜まる機能性ディスペプシア

この4タイプの整理は当院の臨床上の分類であり、公式な診断分類ではありません。まずはご自身がどのタイプに近いかを確認することが、原因を理解する第一歩になります。

脾兪(ひゆ)

場所:背中側、第11胸椎棘突起の下、背骨の中心から指幅2本分ほど外側(足太陽膀胱経に属する背部の兪穴)

効果:東洋医学では「脾」の働き、現代医学の消化吸収の働きに近い機能を整えるツボとして使われてきました

押し方:手が届きにくい部位のため、後述の麺棒を使ったセルフケアで代用します

胃兪(いゆ)

場所:背中側、第12胸椎棘突起の下、背骨の中心から指幅2本分ほど外側(脾兪の一椎下)

効果:「胃」そのものの働きを整えるツボとして、古くから消化器症状に用いられてきました

押し方:脾兪と合わせて、麺棒を使ったセルフケアで刺激します

※脾兪・胃兪の位置は経絡経穴学の教科書レベルで確立した情報です。IBSに対する経穴の科学的研究では、天枢(ST25)や足三里(ST36)など腹部・下肢のツボで臨床試験の蓄積が多く、脾兪・胃兪についての現代研究のエビデンスは限定的です。ここでは当院が伝統理論に基づいて臨床応用しているツボとして紹介しています。

この記事では、大阪府池田市の木もれび鍼灸院・院長 弓削周平(鍼灸師・臨床経験27年)が、ゲップとおならの違いが生まれる理由と、みぞおち裏へのセルフケアの方法を解説します。

脾兪・胃兪の簡単な見つけ方は?

脾兪・胃兪はみぞおちのちょうど背中側、背骨をはさんだ位置にあります。ご自身の指で正確な位置を測るのは難しいため、当院では次のような簡易的な方法をおすすめしています。

みぞおち裏を使った簡易取穴法

  1. 麺棒、またはサランラップの硬い芯を用意する
  2. ベッドや布団の上に横向きに置く
  3. みぞおちの真後ろに当たる位置で、仰向けに寝る

なぜゲップとおならの出方に違いが出るのか?

横隔膜が過緊張して硬くなると、みぞおち周辺のスペースが狭くなり、胃の位置や動きに影響が出ると考えられます。空気の逃げ場が上(ゲップ)に向かいやすい方は呑気症の症状が目立ち、逃げ場が下(おなら)に向かいやすい方はガス型の症状が目立つ、というように、同じ横隔膜の過緊張でも人によって出方が分かれると当院では考えています。また、胃の動きが低下して消化不良が続くと、小腸内で細菌が増殖しやすくなり(SIBO)、おならの増加につながっている可能性もあります。

横隔膜の過緊張 → みぞおち周辺の圧迫 → 消化管の動き・空気の通り道の乱れ → ゲップ過多/おなら過多/膨満のいずれか

呑気症とR-CPDの違いについては、こちらの記事でさらに詳しく解説しています。

※ゲップが全く出せない場合はR-CPD、食後すぐに強い胃もたれや早期満腹感がある場合は機能性ディスペプシアの可能性があります。それぞれ対処法が異なるため、R-CPDの症状ページ・機能性ディスペプシアの症状ページもあわせてご確認ください。

東洋医学ではこの違いをどう考えるのか?

東洋医学では、消化吸収に関わる「脾」と「胃」の気の流れが乱れることで、げっぷ(曖気)やお腹の張りなどの症状が現れると考えます。ストレスや緊張が続くことで気の巡りが滞りやすくなる、という考え方は、現代医学でいう自律神経の乱れとも重なる部分があります。

当院では、みぞおち裏にある脾兪・胃兪への刺激によって脾胃の気の巡りを促すことを、横隔膜へのアプローチと組み合わせて用いています。

セルフケアのポイント

手順

  1. 麺棒、またはサランラップの硬い芯をベッドの上に横向きに置く
  2. みぞおちの真後ろに当たる位置で仰向けになる
  3. 両腕を上げるバンザイの姿勢を取ると、より効果的です

行うタイミング

ご飯を食べた後などに、3分ほど当てる習慣がおすすめです。刺激をしっかり感じたい方は、床や畳など硬い場所で行うと当たりが強くなります。そのままスマートフォンを見ながら行っても構いません。

※効果には個人差があります。強く押しすぎず、心地よいと感じる強さで行ってください。痛みや違和感がある場合は中止してください。

セルフケアで改善しない場合は

セルフケアだけでは変化が出にくい場合、慢性化した横隔膜の過緊張には体質に合わせた施術を組み合わせることをおすすめしています。また、以下のような場合は過敏性腸症候群以外の病気が隠れている可能性があるため、消化器内科への受診をおすすめします。

  • 血便がある
  • 発熱や関節痛を伴う
  • 6ヵ月以内に3kg以上の予期せぬ体重減少がある
  • 50歳以降で初めてこうした症状が出てきた
  • 大腸の病気の既往歴や家族歴がある

木もれび鍼灸院では、横隔膜の過緊張そのものにアプローチする横隔膜刺鍼を、症状の背景に合わせて用いています。

過敏性腸症候群(IBS)の鍼灸治療について

症状の背景や当院の考え方について、症状ページでさらに詳しく解説しています。

過敏性腸症候群の症状ページを見る

よくある質問

過敏性腸症候群ガス型は正式な病名ですか?

いいえ、正式な診断名ではありません。国際的な診断基準(Rome IV)ではIBSは便の形状によって便秘型・下痢型・混合型・分類不能型の4つに分類されており、便通異常を伴わないガスの症状は、分類不能型IBSや機能性腹部膨満症、呑気症(空気嚥下症)など別の枠組みで整理されます。「ガス型」は当事者の方や検索でよく使われる言葉であるため、本記事ではその呼び方を使っています。

ゲップが全く出せない場合は何を疑えばいいですか?

喉の奥にある輪状咽頭筋という筋肉が締まったままになり、飲み込んだ空気が胃に入る前に喉で止まってしまう、逆行性輪状咽頭筋機能不全(R-CPD)という状態が疑われます。呑気症とは対処法が異なるため、区別して考える必要があります。

おならが我慢できず漏れてしまう場合はどうすればいいですか?

我慢を続けることで骨盤底や肛門まわりの筋肉が疲労し、かえって漏れやすくなることがあります。無理に我慢し続けず、姿勢や呼吸を整えるセルフケアを取り入れつつ、症状が長引く場合は消化器内科へのご相談も検討してください。

脾兪・胃兪はセルフケアで押しても安全ですか?

一般的に安全性の高いツボですが、強く押しすぎないこと、痛みや違和感があれば中止することにご注意ください。妊娠中の方や持病のある方は、自己判断で行わず医療者にご相談ください。

何科を受診すればいいですか?

まずは消化器内科の受診をおすすめします。血便や原因不明の体重減少、発熱、関節痛などがある場合、また50歳以降で初めてこうした症状が出てきた場合は、他の病気が隠れていないかを確認してもらうことが大切です。

ゲップやおならを完全に止めたいのですが、可能ですか?

ゲップやおならは体にとって自然な排出であり、完全に止めることを目指すものではありません。回数や量が生活に支障をきたすほど多い場合に、その背景にある呑気の癖や腸内環境の乱れにアプローチすることが目的になります。

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監修

木もれび鍼灸院/ツボ塾 代表

弓削 周平(ゆげ しゅうへい)

保有資格
  • 鍼灸師(はり師・きゅう師)
  • 日本東洋医学会会員
経歴
  • 2002年 明治東洋医学院卒業
  • 2011年 長春中医薬大学卒業
  • 2014年 木もれび鍼灸院開業

参考文献

  1. 日本消化器病学会(編集・発行)『機能性消化管疾患診療ガイドライン2020―過敏性腸症候群(IBS)(改訂第2版)』南江堂,2020年