こんなお悩みありませんか?
「夕方になると目の奥が重い」「近くを見る作業が続くとかすんでくる」「眼科で正常眼圧緑内障の可能性を指摘された」——そうした目の不調でお困りではありませんか。目は体の中でもエネルギー消費の大きい器官であり、細胞内でエネルギーを作る「ミトコンドリア」の働きが深く関わっていると考えられています。
動画解説
今回の動画では、目とミトコンドリアの関係、そして呼吸(横隔膜)を通じたアプローチについて解説しています。この記事では、その内容の背景にある研究知見を、確からしさのレベルを区別しながらもう少し詳しくご紹介します。
なぜ目が疲れやすく、緑内障のリスクが語られるのか?その根本原因
現代医学から見た原因
目、特に網膜から脳へ情報を伝える「網膜神経節細胞(RGC)」の軸索は、視神経が眼球を出る「篩状板(しじょうばん)」という部分の前後で髄鞘(神経を覆う絶縁体のような組織)を欠いています。この髄鞘のない区間にミトコンドリアが集中して存在することは、ヒトの視神経を対象とした複数の組織学的研究で確認されている、比較的確立した知見です(Bristow et al. 2002)。髄鞘がない分、神経の興奮を伝えるためのエネルギー需要が高く、そのぶんミトコンドリアが多く必要になると考えられています(Muench et al. 2021の総説)。
この「ミトコンドリアが集中する場所」は、裏を返せば負荷に弱い場所でもあります。緑内障(正常眼圧緑内障を含む)でRGCが死んでいく過程には、ミトコンドリアの膜が壊れて細胞死のスイッチが入る「アポトーシス経路」が関わることが動物実験で確認されており、原発開放隅角緑内障の患者さんの血液細胞ではミトコンドリアのエネルギー産生能力の低下が報告された研究もあります(Yang et al. 2024の総説)。ただし、これは全身の代理組織での所見であり、目そのもので同じ変化が起きているかはまだ確認されていません。
正常眼圧緑内障については、眼圧の上昇がない分、血流の不安定さ(眼への血の巡りが一定に保たれにくい状態)が酸化ストレスの引き金になるという考え方が、複数の総説で提示されています(Killer & Pircher 2018)。日本人の正常眼圧緑内障患者さんを対象にした研究でも、全身の酸化ストレスの状態と視神経周辺の血流に関連があったと報告されています(Sato et al. 2023)。加えて、加齢に伴ってミトコンドリアの働きそのものが少しずつ低下していくことも、総説レベルで指摘されています(Zhang et al. 2023)。
また、近くのものを見続けるピント調節は、副交感神経が毛様体筋という筋肉を収縮させることで行われており、この神経の仕組み自体はヒトの解剖学として確立しています(StatPearls, Physiology of Accommodation)。近業(近くを見る作業)が続くと毛様体筋が疲労し、眼精疲労につながることも複数の研究で一致していますが、その疲労が細胞レベルでどのようにエネルギーを消費しているかを直接調べたヒトの研究は、今回確認できた範囲では見当たりませんでした。
※自律神経(迷走神経)の働きが全身のミトコンドリアの働きや酸化ストレスに影響するという考え方は動物実験では広く報告されていますが、ヒトでこれを直接確かめた研究は非常に少なく、現時点では「心拍変動と酸化ストレスマーカーに相関が見られる」という観察レベルの証拠にとどまります。
東洋医学から見た根本原因
東洋医学では、目は「肝」との関わりが深いとされ、気血の巡りが滞ることで目の疲れやかすみが生じると考えます。当院では、この気血の巡りと自律神経の働きは密接に関わっていると捉えており、横隔膜の動きが浅くなることで自律神経のバランスが乱れ、目を含む全身への血流や気の巡りが滞りやすくなると考えています。
症状改善への具体的なアプローチ
今すぐできるセルフケア
近くを見る作業が続いたら、意識的に遠くを見る時間を作り、毛様体筋を休ませましょう。あわせて、みぞおち(横隔膜のあたり)に手を当てて深呼吸し、呼吸が浅くなっていないか確認する習慣もおすすめです。
専門的な鍼灸治療のアプローチ
木もれび鍼灸院では、横隔膜そのものへの鍼灸アプローチ「横隔膜刺鍼」を行っています。問診・脈診・腹診で自律神経や気血の状態を確認したうえで治療プランを立て、経過を見ながらフォローアップしていきます。
患者様からよくいただくご質問
Q1. 目の疲れとミトコンドリアの関係は、もう医学的に証明されているのですか?
目の神経にミトコンドリアが多く集まっていること自体はヒトで確認されていますが、「なぜそこに集まるのか」「疲労やストレスがどう影響するのか」という部分は、まだ仮説段階や動物実験の知見にとどまっている部分も多くあります。過度に断定せず、現時点でわかっていることとわかっていないことを分けてお伝えするようにしています。
Q2. 正常眼圧緑内障を指摘されました。何が原因なのでしょうか?
眼圧以外の要因、特に眼への血流の不安定さが関わっているという考え方が有力ですが、原因は一つに特定されているわけではなく、現在も研究が続いている分野です。まずは眼科での経過観察を続けていただきながら、自律神経や呼吸の面からできることを一緒に考えていきます。
Q3. 横隔膜へのアプローチは、目の症状にどう関係するのですか?
横隔膜は自律神経の働きと関わりの深い場所です。当院では、呼吸を整えることで自律神経のバランスを整えるサポートを行っており、目の疲れや全身の不調を訴える方にもこのアプローチを取り入れています。
まとめ:健やかな毎日を取り戻すために
目の疲れや正常眼圧緑内障の背景には、ミトコンドリアの働きや血流の安定性、自律神経のバランスが関わっていると考えられていますが、そのすべてが解明されているわけではありません。わかっていることを土台にしながら、呼吸(横隔膜)を通じて自律神経を整えることが、目を含めた全身の健やかさを保つ一助になるかもしれません。
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参考文献
- Bristow EA, Griffiths PG, Andrews RM, Johnson MA, Turnbull DM. The distribution of mitochondrial activity in relation to optic nerve structure. Arch Ophthalmol. 2002;120(6):791-796.(ヒト視神経の組織学的研究)リンク
- Barron MJ, Griffiths P, Turnbull DM, Bates D, Nichols P. The distributions of mitochondria and sodium channels reflect the specific energy requirements and conduction properties of the human optic nerve head. Br J Ophthalmol. 2004;88(2):286-290.(ヒト視神経の免疫組織化学研究)リンク
- Muench NA, Patel S, Maes ME, et al. The Influence of Mitochondrial Dynamics and Function on Retinal Ganglion Cell Susceptibility in Optic Nerve Disease. Cells. 2021;10(7):1593.(総説)リンク
- Yang TH, Kang EYC, Lin PH, et al. Mitochondria in Retinal Ganglion Cells: Unraveling the Metabolic Nexus and Oxidative Stress. Int J Mol Sci. 2024;25(16):8626.(総説)リンク
- Killer HE, Pircher A. Normal tension glaucoma: review of current understanding and mechanisms of the pathogenesis. Eye (Lond). 2018;32(5):924-930.(総説)リンク
- Sato M, Yasuda M, et al. Sex differences in the association between systemic oxidative stress status and optic nerve head blood flow in normal-tension glaucoma. PLoS One. 2023;18(2):e0282047.(ヒト、横断研究、日本人NTG患者134名)リンク
- Zhang ZQ, Xie Z, Chen SY, Zhang X. Mitochondrial dysfunction in glaucomatous degeneration. Int J Ophthalmol. 2023;16(5):811-823.(総説)リンク
- Motlagh M, Geetha R. Physiology, Accommodation. StatPearls [Internet]. Updated 2022.(解剖生理の確立知見)リンク
- Kurysheva NI, Shlapak VN, Ryabova TY. Heart rate variability in normal tension glaucoma. Medicine (Baltimore). 2018.(ヒト、相関研究)リンク
上記は木もれび鍼灸院のリサーチチームが2026年8月に確認した情報源の一部です。多くは総説・症例対照研究・動物実験であり、目の不調とミトコンドリアの関係を直接ヒトで証明した研究は限られています。研究は今後も更新される可能性があります。
