公開日:2026年9月27日
木もれび鍼灸院では、東洋医学の診察で体の状態を見立て、症状を生んでいる「仕組み」に合わせて、当院独自の5つの施術体系を使い分けます。
同じ「痛み」や「不調」でも、自律神経の乱れから来るもの、姿勢や体の使い方から来るもの、神経の通り道の窮屈さから来るもの、筋肉から来るものでは、狙うべき場所が異なります。
ご自身の症状が対象になるか、まずはご相談ください。
相談・予約する診察:望聞問切と弁証
診察は、東洋医学の基本である四診(ししん)で行います。
望診(ぼうしん)
顔色や舌、姿勢や体の動きを見ます。
聞診(ぶんしん)
声や呼吸の音、においを確かめます。
問診(もんしん)
症状の経過や生活の様子、これまでの検査結果をうかがいます。
切診(せっしん)
脈やお腹に触れて診ます。お腹を診る腹診は、日本の鍼灸・漢方で独自に発展した診察法です。
四診で集めた情報をもとに、体の状態を弁証(べんしょう)という方法で整理します。当院では、次の弁証法を使い分けます。
八綱弁証(はっこうべんしょう)
陰陽・表裏・寒熱・虚実の8つの指標で、病状の全体像を捉えます。すべての弁証の基本です。
臓腑弁証(ぞうふべんしょう)
五臓六腑(心・肝・脾・肺・腎など)のどこに異常があるかを分析します。内科的な不調で最もよく使われる方法です。
気血津液弁証(きけつしんえきべんしょう)
生命エネルギー(気)や血液、体液の過不足や滞り(気虚・血瘀など)を調べます。
六経弁証(ろっけいべんしょう)
冷えを伴う外からの邪(風邪など)による病気の進み方を、太陽病・陽明病・少陽病・太陰病・少陰病・厥陰病の6段階に分けて診ます。
衛気営血弁証(えいきえいけつべんしょう)
熱を伴う感染性の病気(温病)の進み方を、衛分・気分・営分・血分の4段階に分けて分析します。
三焦弁証(さんしょうべんしょう)
温病の病位を上焦・中焦・下焦で捉え、病状の深さを立体的に診ます。
見立てには、解剖学・生理学(西洋医学)の知見も重ね合わせます。そのうえで、施術は木もれび鍼灸院独自の5つの体系で行います。診察は伝統の方法で、施術は現代の解剖学を踏まえた独自の方法で行うのが、当院の特色です。
5つの施術体系
1. 自律神経へのアプローチ
自律神経は、脳から内臓へ一本の線でつながっているわけではありません。途中に、神経の束が集まって信号を中継する場所があります。これを神経節(しんけいせつ)や神経叢(しんけいそう)と呼びます。電車でいえば、多くの路線が乗り入れる乗換駅のような場所です。
この体系では、こうした中継点の周囲と、自律神経と深く関わる横隔膜に鍼で働きかけます。そうすることで、自律神経の働く環境そのものを整えることを目指します。
太陽神経叢刺鍼
みぞおちの奥にある、胃腸の自律神経の中継点に働きかけます。
みぞおちの硬さ・つかえ、胃の働きの低下
蝶口蓋神経節刺鍼
鼻・のど・涙の分泌に関わる、鼻の奥の中継点に、頬骨の下から長い鍼で働きかけます。
鼻づまり・副鼻腔の不調、耳の詰まり感、頭痛
星状神経節刺鍼
首の付け根にある、頭・顔・腕へ向かう交感神経の中継点の周囲に働きかけます。
鼻づまり・鼻水、頭や顔の血流に関わる不調
顎下神経節刺鍼
唾液の分泌に関わる、あごの下の中継点に働きかけます。
舌の痛み・口の乾き
神経節の位置や働きは、解剖学・生理学で確かめられています。一方、鍼による効果の報告は小規模な臨床研究が中心で、仕組みの多くは仮説の段階です。
2. 奇経×骨膜アプローチ
東洋医学には、よく知られた12本の経絡とは別に、体全体を束ねる8本の「奇経(きけい)」があります。その入口となる手首・足首のツボ(八脈交会穴)の多くは、骨の際(きわ)にあります。
一方、赤ちゃんのリハビリテーションで知られるボイタ法は、骨の出っ張りを押すことで全身の姿勢や動きを引き出す方法です。当院は、この2つの体系がどちらも「骨の表面(骨膜)」を体への入口として選んでいる点に着目し、選穴の理論を組み立てました。
八脈交会穴×ボイタ法による選穴
姿勢や動きの観察から、4つの型のどれに当たるかを見立て、手首・足首のツボの組み合わせを選びます。
姿勢の偏り、体のねじれ、首・肩・背中の過緊張
当院独自の理論で、仮説の段階です。鍼でボイタ法の運動そのものを再現するものではありません。
3. 神経の通り道へのアプローチ
神経は、体の動きに合わせて周囲の組織の中を滑るように動いています。通り道の周りが硬くなると神経の滑りが悪くなり、痛みやしびれにつながると考えます。
この体系では、神経が骨の孔(あな)や切れ込みの近くを通る部分に働きかけ、神経が動ける環境を整えることを目指します。
閉鎖孔刺鍼
骨盤にある孔(閉鎖孔)の周囲の組織に働きかけます。
お尻から脚にかけての痛み・しびれ(坐骨神経痛)
肩甲上孔刺鍼
肩甲骨の上縁にある切れ込みの周囲に働きかけます。
肩の痛み・動かしにくさ(五十肩)
神経の滑りという考え方は、リハビリテーションの分野で研究されています。鍼による効果は、当院の臨床経験に基づくものです。
4. ドライニードル
筋肉の中にできた硬いしこり(トリガーポイント)や、手が届きにくい深い筋肉に、直接鍼を届ける方法です。欧米では理学療法の分野でも用いられています。
腸腰筋刺鍼
背骨と脚の付け根をつなぐ、体幹の深い筋肉に働きかけます。
慢性の腰痛、体幹の不安定さ
トリガーポイント鍼治療
離れた場所にまで痛みを引き起こす、筋肉の中の「引き金」の点に働きかけます。
筋肉由来の肩こり・腰痛・頭痛
筋肉由来の痛みに対する研究報告は多くあります。ただし、効果の大きさや持続期間は研究によって差があります。
5. 知熱灸
皮膚の表面に70度前後の熱を短時間あてるお灸です。熱の刺激を、神経の根元(神経根)の不調に役立てることを目指します。
知熱灸
首や腰の神経の根元に関わる領域に、熱の刺激を加えます。
首や腰からくるしびれ、肋間神経痛
仕組みは当院の仮説で、人を対象とした直接の研究はまだありません。ヘルニアなど神経が構造的に強く圧迫されている場合や、神経の広い範囲が傷んでいる場合は、効果が乏しいと考えています。
施術の流れ
- 受付・お話:お困りの症状と、ご来院の目的をうかがいます。
- 四診と弁証:望聞問切の四診で体の状態を把握し、弁証で整理します。
- 体系と施術点の決定:弁証の結果をもとに、当院独自の5つの体系から、使う技術と場所を決めます。
- 施術:反応を確認しながら、刺激の量を調整します。
- 再評価:施術後にもう一度体の状態を確認します。症状の変化は5回を1クールとして評価します。
当院が守っていること
効果を約束しません。ここで紹介している仕組みの多くは、解剖学・生理学の知見と臨床経験から組み立てた仮説です。どこまでが確かめられていて、どこからが仮説なのかを、体系ごとに分けて書いています。
医療機関の診断を優先します。鍼灸は医師の診断や治療に代わるものではありません。器質的な病気がないことの確認は医療機関で行うことを前提とし、必要に応じて受診をおすすめします。
刺鍼の角度・深さ・刺入点は公開しません。たとえば星状神経節のすぐ手前には、椎骨動脈・鎖骨下動脈や肺を包む膜(胸膜)があります。解剖学的な訓練なしに真似をすると危険なためです。一方で、技術の考え方と理論的な背景は公開しています(このページ下部の「専門家向け」をご覧ください)。
よくあるご質問
どの体系で施術するかは、どう決めますか?
望聞問切の四診と弁証で体の状態を見立て、症状を生んでいる仕組みを判断します。そのうえで、当院独自の5つの体系から1つ、または複数を組み合わせて施術します。
病院で「異常なし」と言われた不調でも相談できますか?
はい。当院は、検査で異常が見つからない機能性・自律神経性の不調を主な対象としています。ただし、器質的な病気がないことの確認は医療機関で行うことを前提としており、必要に応じて受診をおすすめします。
痛みはありますか?
深い位置に届く長い鍼を使う技術があり、横隔膜刺鍼では内側から外側へ向かう圧迫感を感じることが多いです。感じ方には個人差があるため、反応を確認しながら刺激の量を調整します。
何回くらいで変化を判断しますか?
当院では、5回を1クールとして症状の変化を評価します。必要な回数は症状や体質によって異なります。
鍼を刺す位置や深さを教えてもらえますか?
刺鍼の角度・深さ・刺入点は公開していません。神経節や横隔膜の周囲には重要な血管や臓器があり、解剖学的な訓練なしに真似をすると危険なためです。技術の考え方と理論的な背景は公開しています。
専門家向け:理論的背景
鍼灸師・医療従事者・研究者の方に向けた記述です。文献はページ末尾にまとめています。確度の表記:確立複数の研究・教科書で一致 報告あり臨床研究はあるが小規模・対照なし 本理論当院の再構成(要検証)
体系1-a. 自律神経節への刺鍼の系譜
神経節を標的とする刺鍼は、当院が初めて行ったものではありません。神経ブロック療法の標的を鍼で刺激する試みとして、国内外で蓄積があります。
- 星状神経節刺鍼:日本では1954年に間中喜雄が提唱しました(安藤ほか 1988 の引用による)。星状神経節ブロックの刺入法を踏襲した「特殊鍼法」として広まっています。
- 蝶口蓋神経節刺鍼:1960年代に、北京同仁医院の李新吾が考案しました(李新吾法、「新吾穴」「治鼻3」)。背景にあるのは、Sluder(1910)以来の蝶口蓋神経節ブロックの系譜です。
当院の自律神経へのアプローチは、これらの系譜の上に、太陽神経叢・横隔膜・顎下神経節を加えました。そして四診と弁証に基づく診察体系のなかで統合したものです。
体系1-b. 星状神経節刺鍼:解剖学的にわかっていること
確立尾崎ほか(1987)は、遺体19体38側で解剖学的検討を行いました。
- 星状神経節の平均の大きさは、長径27.1mm、幅7.7mm、厚さ2.8mmでした。
- 高さは、第7頸椎体の中央から第2胸椎体の上部にかけてでした。
- 前方には椎骨動脈・鎖骨下動脈・胸膜頂が位置していました。
確立同研究では、ブロックに準じた従来の刺入法で神経節に当たったのは、38例中8例(内側縁)にとどまりました。その8例では、全例で神経節に達する前に動脈を貫いていました。うち7例では胸膜頂も貫いていました。
著者らは、従来の星状神経節刺鍼の多くは、神経節そのものではなく頸部交感神経幹、または神経節周囲への刺鍼とみなすべきだと考察しています。当院が刺入情報を公開しない理由の一つは、この解剖学的リスクにあります。
報告あり安藤ほか(1988)の報告の要点は次のとおりです。
- 対象は、ハウスダスト・ダニによる鼻アレルギー患者です。
- 鼻粘膜誘発テストのもとで刺鍼すると、刺激側の鼻汁分泌が有意に抑制されました(P<0.05)。
- 鼻腔通気は5例中4例で改善しました。
- 対象は10例と小規模で、偽鍼対照はありません。
- 直後効果の持続は、多くが1日以内でした。
体系1-c. 蝶口蓋神経節刺鍼:研究の現状と上咽頭擦過療法との関係
- 報告ありアレルギー性鼻炎:Fu ほか(2019)によるシステマティックレビュー・メタアナリシスがあります。
- 報告あり耳管機能障害・分泌性中耳炎:王ほか(2020、n=60)、林ほか(2014)の報告があります。ただし偽鍼対照がなく、罹病期間の短い例(自然軽快しやすい急性期)を含みます。
- 本理論上咽頭擦過療法(EAT・Bスポット療法)との関係:原渕(2025)が整理したEATの作用機序は、粘膜収斂・瀉血・自律神経刺激の3つです。蝶口蓋神経節刺鍼が共有しうるのは、このうち自律神経調節の経路に限られると考えます。当院はEATと「同等の効果」を主張しません。上咽頭リンパ組織を介する病巣疾患(IgA腎症など)も対象外です。
- 解剖学的な注意:上咽頭粘膜の感覚は、主に迷走神経・舌咽神経が担います。一方、蝶口蓋神経節の副交感線維は顔面神経(大錐体神経)由来です。両者を「どちらも副交感」とひとまとめにはできません。
体系2. 奇経×骨膜アプローチ:理論の骨子
八脈交会穴とボイタ法の誘発帯を照合すると、点どうしの一致は少なく、厳密に一致するのは列缺=橈骨茎状突起のみです。しかし、次の4つの観点から、両者の設計論理が平行していると考えます。
- 確立後渓-尺骨茎状突起-上腕骨内側上顆:これは手太陽小腸経の骨線(後渓→陽谷→養老→支正→小海)そのものです。このうち上腕骨内側上顆は、ボイタ法の上肢主誘発帯にあたります。
- 確立列缺=橈骨茎状突起:両者は同一部位で、腕橈骨筋の停止部です。ボイタ法の橈骨茎状突起刺激が誘発する前腕回外・手掌開大は、任脈の主治(胸郭・肺系)と方向性が一致します。
- 本理論維脈=骨間、蹻脈=骨突起:陰維・陽維の遠位ゲート(内関・外関)と郄穴(築賓・陽交)は、骨幹・骨間膜の高さにあります。一方、陰蹻・陽蹻の関連穴(交信・跗陽・僕参、茎状突起)は、骨端の突起にあります。この規則性は、上下肢とも例外なく成立します。「蹻=踵」「維=つなぎ止める」という字義とも合致します。
- 本理論八脈交会穴の4組=ボイタ法の4相:
- 後渓-申脈 → 反射性腹這い
- 公孫-内関 → 反射性寝返り第1相(第7〜8肋間=横隔膜)
- 足臨泣-外関 → 同第2相(肩甲帯と骨盤帯の分離)
- 列缺-照海 → 支持相・嚥下
これらの対応は、どちらの体系も骨膜・深部組織を主要な入力面として選んでいるという観点から導いたものです。ボイタが示した求心路(骨膜・関節包→後索→内側毛帯)を、両体系が共有しているという仮説です。
限界:
- 共有されるのは入力経路であり、出力ではありません。刺鍼でボイタ法の反射性移動運動が再現される根拠はありません。
- 陰維・陰蹻の上肢走行は外挿です(間中系の日本の奇経治療の前提に依拠しています)。
- 両体系を直接比較した研究は存在しません。
検証可能な命題:
- 後渓刺鍼後に、上腕骨内側上顆の骨膜圧痛閾値が上昇する。
- 公孫+内関で、横隔膜の可動域(超音波)が変化する。
体系3〜5. 神経の通り道・ドライニードル・知熱灸
- 本理論神経の通り道:末梢神経の滑走性(neurodynamics)の低下を、痛み・しびれの一因とみなします。そのうえで、神経が骨性の孔や切痕の近傍を通る部位の周囲組織に刺鍼します。鍼による効果は、当院の臨床経験に基づくものです。
- 報告ありドライニードル:筋筋膜性疼痛に対する研究は多数あります。ただし、効果量・持続・偽鍼との差は研究間でばらつきがあります。
- 本理論知熱灸:熱刺激が熱ショックタンパク質(HSP)を誘導し、デルマトーム・経絡を介して神経根症状に作用するという仮説です。ヒトでの直接的なエビデンスはありません。臨床上は、ヘルニア等の構造的圧迫や、脱髄性の広範な神経損傷では効果が乏しい傾向があります。
症状や経過をお聞かせください。当院の対象かどうかも含めてお答えします。
相談・予約する監修
木もれび鍼灸院/ツボ塾 代表
弓削 周平(ゆげ しゅうへい)
- 鍼灸師(はり師・きゅう師)
- 日本東洋医学会会員
- 2002年 明治東洋医学院卒業
- 2011年 長春中医薬大学卒業
- 2014年 木もれび鍼灸院開業
参考文献
- 尾崎朋文, 北村清一郎, 森俊豪, 竹下イキ子, 上島幸枝, 堺章. 星状神経節刺針の解剖学的検討. 全日本鍼灸学会雑誌 1987; 37(4): 268–278. J-STAGE
- 安藤文紀, 中村辰三, 神谷勝久, 竹中洋, 水越治. 鼻アレルギーに対する星状神経節刺鍼の効果. 全日本鍼灸学会雑誌 1988; 38(3): 281–287. J-STAGE
- 王惠敏, 吴继勇, 马华安, 严道南, 孙艺. 3D打印技术辅助下针刺翼腭神经节治疗咽鼓管功能障碍的临床研究. 南京中医药大学学报 2020; 36(1): 28–31. 南京中医药大学学报
- 北京市卫生健康委员会. 第四届”新吾针刺蝶腭神经节法治疗鼻炎技术培训会”召开. 2019-12-18. 北京市卫生健康委员会
- Fu Q, Zhang L, Liu Y, et al. Effectiveness of acupuncturing at the sphenopalatine ganglion acupoint alone for treatment of allergic rhinitis: a systematic review and meta-analysis. Evid Based Complement Alternat Med 2019; 2019: 6478102.
- 林子升, 孙旭鸯, 刘晓华. 针刺蝶腭神经节治疗分泌性中耳炎疗效观察. 上海针灸杂志 2014; 33(1): 47–49.
- 原渕保明. 慢性上咽頭炎に対する上咽頭擦過療法. 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報 2025; 128: 205–214.
- 李時珍 原著, 王羅珍・李鼎 校注, 勝田正泰 現代語訳・和訓. 現代語訳 奇経八脈考. 東洋学術出版社, 2009.
- Vojta V, Peters A 著, 富雅男 訳. ボイタ法の治療原理. 医歯薬出版, 2002.