この記事の結論
唾液が多すぎると感じるときは、「顎の緊張の左右差」と「喉・食道の過敏さ」の2つを背景に考え、噛み合わせの左右差を整える練習、側頭筋のマッサージ、中平(ちゅうへい)へのお灸を試します。これは基礎疾患のない方向けの、院の見解と臨床経験にもとづくセルフケアです。あなたのせいではありません。ちゃんと理由があります。
呑気症(症状ページ)や機能性ディスペプシア、お腹の症状があり、特に大きな病気を指摘されていない方向けです。
対象外の方:パーキンソン病などの神経の病気がある方、強迫性障害やパニックなど強い緊張が関わる方、それに関係する薬を飲んでいる方は、先にそちらへの対応が必要になることがあり、この記事のセルフケアは合わない場合があります。パーキンソン病のよだれは、唾液が増えるというより、飲み込む回数が減ることが主な理由とされています(確立した知見)。
先に医療機関へ:急に唾液が増えた/飲み込みにくい・むせる/片側の腫れや痛み/薬を始めてから増えた/胸やけ・酸っぱいものが上がる/体重が減っている。
唾液が少なくて困っている方:唾液が減って口臭が気になる場合は、耳下腺の唾液を増やすマッサージの記事をご覧ください(この記事とは目的が逆です)。
唾液が多すぎるときの対処法は?
3つのセルフケア(院の見解にもとづく)
① 噛み合わせの左右差を整える:先に当たる歯と反対側で割り箸を噛む。最大の50〜60%の力で10〜15回、毎日。
② 側頭筋のマッサージ:こめかみの上の筋肉を手根部で円を描くように20〜30回。痛みのない範囲で。
③ 中平へのお灸:手のひら側、中指の付け根の関節の上。せんねん灸で1日3壮まで。
この記事では、大阪の木もれび鍼灸院・院長 弓削周平(鍼灸師・臨床経験27年)が、唾液が多いと感じる背景と、ご自宅でできる3つのセルフケアを解説します。効果には個人差があります。
※この記事の内容は、ツボ塾の動画「唾液過多を改善する方法」で話したことを文章にしたものです。唾液過多そのものを扱った研究を今回は確認できていないため、確度を各項目に付けています。
なぜ唾液が多くなるのか?
院では、唾液が多いと感じる背景を大きく2つに分けて考えています。どちらも、唾液の量そのものが増えている場合と、量は多くなくても強く感じている場合があります。
背景① 耳下腺の唾液と、顎の緊張の左右差
唾液が多くて困っている方の多くは、「サラサラした水のような唾液」と表現されます。耳下腺(じかせん)は耳の前から頬の後ろにある大きな唾液腺で、ここから出る唾液はサラサラしています。これは教科書的に確立した生理学です。
耳下腺は、噛む筋肉(咬筋・こうきん)に重なる位置にあります。院では、左右の顎の緊張がアンバランスになると、この唾液が大量に出る場合があると見ています。この部分は院の見解で、研究での検証はできていません(未検証)。
背景② 喉・食道の感覚過敏
もう一つは、喉の違和感(咽喉頭異常感症、ヒステリー球とも呼ばれます)があり、喉や食道の内臓感覚が敏感になっている方です。唾液を飲み込むときに身構えてしまい、唾液や空気が喉を通るたびに強く感じます。そのため唾液をうまく飲み込めず、口の中にたまって、「唾液が増えた」と感じるパターンです。
この仕組みは、機序的仮説として紹介します。今回は文献の取得が1回きりで、裏づけとなる論文を確認できなかったため、研究で支えられているとは言えません(実際には未検証に近い位置づけです)。
喉の違和感そのものについては、咽喉頭異常感症と舌骨はがしの記事や7つのセルフケアの記事もご覧ください。
※胸やけや酸っぱいものが上がる感じのある方は、逆流(胃食道逆流症)が関わることがあります。その場合はセルフケアより先に医療機関でご相談ください(逆流性食道炎の鍼灸治療について)。
① 噛み合わせの左右差を整えるには?
噛み合わせには、右ばかり、左ばかりで噛むという癖があります。この癖が、顎の緊張の左右差につながると院では考えています。
噛み合わせの左右差を整える手順
- 口を大きく開けてから、ゆっくり噛み合わせます。
- 左右のどちらの歯が先に当たるかを確かめます。
- 左が先に当たる場合は右側で、右が先に当たる場合は左側で、割り箸を噛みます。
- 最大の力の50〜60%で、カチカチと連続して10〜15回噛みます。
- これを毎日続けます。
続けるうちに左右どちらでも噛めるようになり、顎の緊張のアンバランスが和らいで、唾液過多が少し楽になる方がいる、というのが院の臨床での経験です(経験的示唆)。
② 側頭筋をゆるめるマッサージのやり方は?
噛み合わせの左右差があまりない方は、顎の緊張にかかわる筋肉をゆるめる方法もあります。側頭筋(そくとうきん)は、こめかみから頭の側面に広がる大きな筋肉です。耳下腺に重なる咬筋とは別の筋肉ですが、どちらも噛むときに働き、顎の緊張に関わります。
側頭筋のマッサージ
- 頭の左右に手を置き、カチカチと数回、噛みしめます。
- 筋肉がぽこっと盛り上がる点を見つけます。
- そこに手のひらの付け根(手根部)を当て、円を描くように、左右とも20〜30回マッサージします。
強く押しすぎると頭痛が出ることがあります。片頭痛のある方は特に、痛みのない範囲で行ってください。これも院の見解にもとづく方法で、効果には個人差があります。
③ 中平へのお灸のやり方は?
喉の過敏さに対しては、手のひらにある中平(ちゅうへい)というツボを使います。
中平(ちゅうへい)
場所:手のひら側、中指の付け根の関節の上。
確かめ方:押して感じ方を確かめます。喉の感覚が過敏になっているときは、ここが感じにくくなる(鈍麻する)ことがあります。院の臨床観察です(経験的示唆)。
お灸:せんねん灸を使い、1日3壮まで。熱さを感じたら、その日はそれ以上しません。
臨床では、お灸を続けるうちに喉の違和感が和らぎ、無意識に唾液を飲み込めるようになる方を経験しています(経験的示唆)。これは院の観察で、効果には個人差があります。
セルフケアで改善しない場合は
唾液が多い状態が続くと、周囲に理解されにくく、一人で抱えてしまいがちです。一人で抱えなくて大丈夫です。次の場合は、セルフケアを続ける前に医療機関を受診してください。
- 急に唾液が増えた
- 飲み込みにくい、むせる
- 片側の腫れや痛みがある
- 薬を始めてから増えた
- 胸やけ、酸っぱいものが上がる
- 体重が減っている
お腹の症状(呑気症や機能性ディスペプシア)を伴う方は、舌トレの記事や呑気症と横隔膜の記事もあわせてご覧ください。
よくある質問
唾液が多すぎるときのセルフケアは?
基礎疾患のない方では、噛み合わせの左右差を整える練習、側頭筋のマッサージ、手のひらの中平(ちゅうへい)というツボへのお灸の3つを、院では紹介しています。いずれも院の見解と臨床での経験にもとづくもので、効果には個人差があります。急に唾液が増えた、飲み込みにくい、むせる、片側の腫れや痛みがある、胸やけがある場合は、先に医療機関へご相談ください。
サラサラした唾液が多いのはなぜですか?
耳下腺(じかせん)から出る唾液は、水のようにサラサラしています。院では、左右の顎の緊張のバランスが崩れると唾液が多くなる場合があると考えていますが、これは院の見解で、研究での検証はできていません。
喉に違和感があると、唾液が増えたように感じるのはなぜですか?
喉や食道が敏感になっていると、唾液を飲み込むたびに強く感じ、そのたびに身構えてしまい、口の中に唾液がたまりやすくなると考えられます。実際の量が多くなくても、多いと感じることがあります。ただし、今回の文献取得では裏づけを確認できておらず、機序的仮説として扱っています。
どんなときは病院に行くべきですか?
急に唾液が増えた、飲み込みにくい、むせる、片側が腫れる・痛む、薬を始めてから増えた、胸やけや酸っぱいものが上がってくる、体重が減っている、のいずれかがあれば、セルフケアの前に医療機関を受診してください。パーキンソン病などの神経の病気、強迫性障害やパニックなど強い緊張が関わる場合も、そちらの対応が先になります。
噛み合わせの練習は毎日してもよいですか?
顎の痛み、音が鳴る、口が開きにくいといった症状がなければ、毎日行って構いません。力は最大の50〜60%、10〜15回を目安にしてください。顎に痛みや音、開けにくさがある方(顎関節症の可能性があります)は行わず、歯科で相談してください。
中平のお灸で気をつけることは?
感覚が鈍い場所は、熱さに気づきにくく、やけどをしやすくなります。お灸は1日3壮までとし、熱さを感じたら、その日はそれ以上しないでください。赤みや水ぶくれが出たら中止します。糖尿病などで感覚が落ちている方は避けてください。
妊娠中にも唾液が増えることはありますか?
妊娠中に唾液が増えることはあります。つわりなどに伴うこともあるため、気になるときは産婦人科でご相談ください。お灸を使う場合は、必ず主治医や鍼灸師に相談したうえで行ってください。
唾液を増やすマッサージとは逆の話ですか?
目的が逆です。唾液が減って口臭が気になる方には、耳下腺の唾液を増やすマッサージを紹介した別の記事があります。この記事は、唾液が多くて困っている方向けです。
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監修
木もれび鍼灸院/ツボ塾 代表
弓削 周平(ゆげ しゅうへい)
- 鍼灸師(はり師・きゅう師)
- 日本東洋医学会会員
- 2002年 明治東洋医学院専門学校卒業
- 2011年 長春中医薬大学卒業(中医学士)
- 2014年 木もれび鍼灸院開業
参考文献
本文で扱った論文はありません。この記事の内容は、院長の臨床経験とツボ塾の動画「唾液過多を改善する方法」にもとづきます。

