【過敏性腸症候群】腸活で悪化するのはなぜ?ガスが増える3つの理由

【過敏性腸症候群】腸活で悪化するのはなぜ?ガスが増える3つの理由 消化器

この記事の結論

過敏性腸症候群で腸活をすると悪化することがあるのは、腸活で増やしがちな食品の多くが、腸内細菌に発酵されてガスを出しやすい成分を含んでいるからです。とくに、小腸で吸収されにくい糖質(FODMAP)、小麦ふすまのような不溶性食物繊維、そして小腸で細菌が増えすぎた状態(SIBO)が重なると、お腹の張りやおならが増えやすくなります。腸活そのものが悪いのではなく、「何を」「どれだけ」摂るかを自分の体に合わせて見直すことが大切です。

この記事の対象者
過敏性腸症候群と診断されている、または似た症状があり、食物繊維やヨーグルトなどの腸活を続けているのにお腹の張り・ガス・おならが良くならない方に向けた記事です。便秘が主な悩みで、食物繊維をどう摂ればよいか知りたい方は「食物繊維はまったく摂らないほうがいいですか?」のFAQをご覧ください。ゲップが多い・空気を飲み込んでしまう悩みは呑気症のページで解説しています。

過敏性腸症候群で腸活をすると悪化するのはなぜ?

過敏性腸症候群(かびんせいちょうしょうこうぐん/IBS)は、検査で大きな異常が見つからないのに、腹痛やお腹の不快感と、便秘・下痢などの便通の異常が長く続く病気です。20〜40歳代の比較的若い女性に多いことが知られています。

医学的には、便の形によって便秘型・下痢型・混合型・分類不能型の4つに分けられます。この記事でいう「ガス型」は正式な分類ではなく、お腹の張りやおならが一番の悩みになるタイプを指す通称です。

この記事では、大阪府池田市の木もれび鍼灸院・院長 弓削周平(鍼灸師・臨床経験27年)が、腸活でかえってお腹が張る理由と、食事の見直し方、自宅でできるセルフケアを解説します。

理由1:腸活食品に多い「FODMAP」が発酵してガスになる

FODMAP(フォドマップ)とは、発酵しやすいオリゴ糖・二糖類・単糖類・ポリオール(糖アルコール)の頭文字をとった言葉です。これらは小腸で分解・吸収されにくく、そのまま大腸まで届き、腸内細菌に素早く発酵・分解されます。その結果、水素ガスやメタンガスが発生し、さらに腸の中に水分を引き込みます。

ガイドラインでは、FODMAPを多く含む代表的な食品として、小麦、タマネギ、ひよこ豆、レンズ豆、リンゴ、トウモロコシ、牛乳、ヨーグルト、はちみつが挙げられています。ヨーグルトや豆類、オリゴ糖など、腸活でよく勧められる食品が多く含まれていることが分かります。

欧米を中心とした複数の比較試験では、FODMAPを減らした食事(低FODMAP食)でIBSの症状が軽くなることが示されています。ただし、日本人での受け入れやすさや有効性は、まだ検討が必要とされています。

理由2:食物繊維の「種類」によっては症状が悪化する

食物繊維には、水に溶けてゲル状になる水溶性食物繊維と、水を吸って便のかさを増やす不溶性食物繊維があります。オオバコ(サイリウム)などの水溶性食物繊維は、IBSの症状改善に有用と報告されています。

一方で、小麦ふすまのような不溶性食物繊維は、IBSに伴う便秘には有効なものの、IBSの全般的な症状や腹痛をかえって悪化させたという報告があります。「食物繊維ならなんでも良い」と考えて不溶性のものを大量に摂ると、張りや痛みが強くなることがあるのです。

理由3:小腸で細菌が増えすぎている(SIBO)と、発酵が早く始まる

SIBO(シーボ/小腸細菌異常増殖)とは、本来は細菌が少ない小腸で、細菌が異常に増えている状態です。大腸には多くの腸内細菌がすんでいますが、小腸の細菌は多くありません。

ガイドラインでは、SIBOはIBSの病態のひとつと考えられており、小腸での細菌の増殖を抑える抗菌薬がIBSの治療に用いられています。小腸に細菌が多いと、本来なら大腸で起こる発酵が小腸で始まるため、食べてしばらくすると、お腹がパンパンに張りやすくなると考えられます。

腸活で発酵しやすい食品を増やす → 腸内細菌が発酵する → 水素・メタンガスが増える → お腹の張り・おならが悪化

当院では、腸活をしばらく続けると最初は調子が良かったのに、だんだん張りが強くなったという方を多く見てきました。腸内細菌のバランスが食事の変化で崩れることが一因ではないかと考えていますが、これは当院の臨床経験に基づく見方であり、効果には個人差があります。

※胃もたれやみぞおちの痛みが中心の方は、機能性ディスペプシアが関係していることもあります。過敏性腸症候群は機能性ディスペプシアなど、ほかの消化管の病気と合併することが多いとされています。

腸活で悪化したときは、食事をどう見直せばいい?

まず行いたいのは、症状が悪化した「きっかけ」を振り返ることです。当院では、風邪をひいた後、痛み止めや胃酸を抑える薬を長く飲んだ後、手術の後、極端なダイエットの後などに症状が強くなったという方が少なくありません。薬がきっかけと思われる場合は、自己判断で中止せず、処方した医師に相談してください。

食事の見直し方

  1. 食べた物とお腹の張り具合を記録し、張りやすい食品を探す
  2. FODMAPを多く含む食品や、小麦ふすまなどの不溶性食物繊維、ヨーグルトなどの乳製品を一時的に減らす
  3. 脂質の多い食事、カフェイン、香辛料も症状を悪化させやすいため控えめにする
  4. 症状が落ち着いたら、減らした食品を少しずつ戻し、食べられる食品を増やしていく

ガイドラインでは、間食や欠食を避けて規則正しく食べることが、すべてのIBS患者に共通する大切なポイントとされています。一方で、どの食品が症状を悪化させるかは人によって異なります。

特定の食品を極端に抜く食事法を続けて、体重が急に減った後に症状が出てきたという方もいます。その場合は、抜いていた食品を少しずつ戻すことで、お腹の状態が回復していく方もいます。

痩せている若い女性に多いのはなぜ?

当院で過敏性腸症候群のガス型やSIBOの方を見ていると、痩せている方、女性、若い方の3つに当てはまる方が多い印象があります。

痩せている方では、胃下垂などの内臓下垂や、胃の形の変化が起こっている可能性があります。内臓の位置を保つためには、胸とお腹を仕切るドーム状の呼吸筋である横隔膜(おうかくまく)が重要です。当院では、横隔膜の動きを取り戻し、内臓の位置や形を整えることが、ガスの排出と食事量の回復、ひいては体重の増加につながると考えています。これは当院の臨床仮説であり、効果には個人差があります。

セルフケアのポイント

横隔膜を動かす呼吸法

普通の呼吸でも横隔膜は上下に動いており、この動きに合わせてお腹の中の内臓も動いています。お腹をへこませる呼吸で、横隔膜をしっかり動かしてみましょう。

  1. 深呼吸をしながら、お腹をへこませてみる
  2. お腹がへこんだ感覚を覚えたら、今度は息を止めてお腹をへこませる
  3. お腹をへこませたまま、胸を上に引き上げる

ガスの排出を助けるツボ:支溝(しこう)

支溝(しこう)

場所:前腕の手の甲側で、手首のしわから肘に向かって指4本分ほど上がった、2本の骨の間にあります。

効果:当院では、腸のぜん動運動を促し、ガスや便を出しやすくする目的で用いています。

押し方:反対の手の指で、じわーっと押さえます。

行うタイミング

呼吸法は、毎日の寝る前と朝起きたときに行うのがおすすめです。ツボ押しは、お腹の張りが気になるときに行ってください。

※効果には個人差があります。強く押しすぎず、心地よいと感じる強さで行ってください。息を止める呼吸法で気分が悪くなったり、痛みや違和感があったりする場合は中止してください。

セルフケアで改善しない場合は

お腹の張りで食事量が減ると、体重がさらに落ち、症状が長引く悪循環に入りやすくなります。血便、体重減少、発熱、関節痛、お腹のしこりがある場合や、50歳以上で初めて症状が出た場合は、ほかの病気が隠れていないか確認するため、消化器内科での受診をおすすめします。

日本消化器病学会のガイドラインでは、標準的な治療で十分な効果が得られない場合の選択肢として鍼治療が提案されており、灸治療で腹部膨満などが改善したとの報告も紹介されています。当院では、みぞおちの奥にある腹腔神経節などの自律神経の集まりに着目した施術や、胃の形を整えることを目的とした鍼灸治療を行っています。

過敏性腸症候群の鍼灸治療について

お腹の張りやガスが続いてお困りの方は、お気軽にご相談ください。

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よくある質問

ヨーグルトや納豆などの発酵食品は、やめたほうがいいですか?

一律にやめる必要はありません。ヨーグルトや牛乳は乳糖を含み、FODMAPの多い食品に数えられるため、お腹が張る方は量を減らして様子を見る価値があります。一方で、ガイドラインではプロバイオティクスはIBSの治療に有用とされており、合う菌・合わない菌には個人差があります。食べた後の張り具合を記録し、自分に合うものを見つけることをおすすめします。

食物繊維はまったく摂らないほうがいいですか?

いいえ。オオバコなどの水溶性食物繊維はIBSの症状改善に有用と報告されています。お腹が張りやすいのは、小麦ふすまのような不溶性食物繊維や、FODMAPを多く含む食品をまとめて増やした場合です。種類と量を見直し、症状が落ち着いてから少しずつ戻していきます。

低FODMAP食はずっと続けるものですか?

いいえ。一時的に減らして症状の原因になる食品を見つけ、落ち着いたら少しずつ食べられる食品を増やしていく方法です。長く制限を続けると食事が偏り、体重が減る原因にもなります。本邦での有効性はまだ検討段階とされているため、医師や管理栄養士に相談しながら行ってください。

SIBOかどうかは自分で判断できますか?

自己判断はできません。食後にお腹が張る、ガスが多いといった症状は、過敏性腸症候群やSIBO以外の病気でも起こります。気になる場合は消化器内科で相談してください。

「過敏性腸症候群ガス型」は正式な病名ですか?

正式な分類ではありません。医学的には便の形状によって便秘型・下痢型・混合型・分類不能型の4つに分けられます。ガス型は、おならやお腹の張りが主な悩みになるタイプを指す通称です。

妊娠中でもこの記事のセルフケアを行ってよいですか?

妊娠中は、お腹をへこませる呼吸法や食事制限を自己判断で始めず、かかりつけの産婦人科医に相談してください。ツボ押しも、強く押さず、体調に不安がある場合は控えてください。

どんな症状があれば病院を受診したほうがよいですか?

血便、体重減少、発熱、関節痛、お腹のしこりがある場合や、50歳以上で初めて症状が出た場合、大腸の病気の家族歴がある場合は、過敏性腸症候群以外の病気が隠れていないか確認するため、消化器内科を受診してください。

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監修

木もれび鍼灸院/ツボ塾 代表

弓削 周平(ゆげ しゅうへい)

保有資格
  • 鍼灸師(はり師・きゅう師)
  • 日本東洋医学会会員
経歴
  • 2002年 明治東洋医学院卒業
  • 2011年 長春中医薬大学卒業
  • 2014年 木もれび鍼灸院開業

参考文献

  1. 日本消化器病学会(編)『機能性消化管疾患診療ガイドライン2020―過敏性腸症候群(IBS)(改訂第2版)』南江堂, 2020(CQ 3-1, 3-3, 3-6, 3-19, 3-20, BQ 1-4)
  2. 「過敏性腸症候群(IBS)」An Illustrated Reference Guide, p.142–145