この記事の結論
膝が痛いときは、まず足首の「つま先を膝に近づける動き」を左右で比べ、動きが落ちている側の足の外側(短趾伸筋)とふくらはぎの奥(後脛骨筋)を、自分の手でゆるめていきます。膝だけを見るのではなく、足首から整えていく考え方です。足首をほぐして膝の痛みが和らぐかどうかは、研究ではまだ確かめられていません。
膝が腫れている方、正座がしにくい方、整形外科で変形性膝関節症と言われた方。これは「膝の痛みシリーズ」の1本目(足首編)で、②股関節、③首へと続きます。膝のお皿の下からのアプローチを知りたい方は、膝蓋下脂肪体アプローチの記事もあわせてご覧ください。
膝が痛いとき、足首はどうほぐせばいいのか?
足首のほぐし方は、2か所です。外くるぶしの斜め前にある短趾伸筋(たんししんきん)と、ふくらはぎの奥にある後脛骨筋(こうけいこつきん)をゆるめます。どちらも、足首のつま先を膝に近づける動きを出しやすくするのが目的です。
短趾伸筋のほぐし
場所:外くるぶしの斜め前〜下。足の甲の外側から、2〜4番目の足指へ向かう筋肉です。
目的:かかとの骨(踵骨)の角度を整え、間接的に膝の負担を減らすこと(院の見解・未検証)。
やり方:親指を当て、筋肉の流れに沿ってほぐします。腫れさせない程度の強さで、3分ほどが目安です。
後脛骨筋のほぐし
場所:ふくらはぎの内側の筋肉(内側頭)と外側の筋肉(外側頭)の間にある溝。その奥に、後脛骨筋があります。
目的:足首の内側の安定にかかわる筋肉をゆるめ、足首が曲がりやすい状態をつくること。
やり方:溝に指を入れ、その下のヒラメ筋を通して奥の後脛骨筋を圧迫します。ほかの4本の指で脚をしっかり支えます。
この記事では、大阪の木もれび鍼灸院・院長 弓削周平(鍼灸師・臨床経験27年)が、足首の動きの確かめ方、2つのほぐし方、研究で分かっていることを解説します。
足首の動きが落ちているかは、どう確かめるのか?
確かめるのは、足首の「伸び縮み」です。ここでは、つま先を膝に近づける動き(背屈)を「縮む」、つま先を遠ざける動きを「伸びる」と呼びます。左右の脚で、同じくらい動くかを比べます。
- 膝を伸ばした状態で、足首をつま先側へ反らす動きと、遠ざける動きを、左右で比べる
- 膝を曲げた状態でも、同じように左右で比べる
- 自分では分かりにくいときは、ご家族に足先を動かしてもらい、動きにくさや引っかかりがないかを見てもらう
膝を曲げた状態で足首が縮みにくいときは、足首の中で引っかかりが出ているサインと考えます。目安になるのは、和式トイレのようにしゃがみ込んだとき、足首が硬くて深く曲げられない、という場面です。
足首の動きが落ちると、片方の脚にしか体重をかけにくくなります。すると、反対側の脚に負担がかかり、そちらの膝や股関節に影響が出ると考えます。足首の硬さには、膝の裏の緊張が関わることもあります。詳しくは足首が硬い原因と委陽穴の記事をご覧ください。
なぜ膝が痛いのに、足首を見るのか?
動画で話したこと
股関節・膝・足首は、腰から下の重要な3つの関節です。足首や股関節の動きが落ちていることが、膝の痛みの引き金になっていると考えるため、膝が痛くても、足首と股関節の動きを先に確かめます。
研究で分かっていること
高齢の日本人女性を対象にした症例対照研究(膝の変形性関節症のある群とない群を比べた研究)では、膝の変形性関節症のある群で、足首の背屈をはじめ、股関節や膝の動きの範囲が小さいと報告されています。ただし、この研究は「ある時点での違い」を見た観察研究です。足首の動きが落ちたから膝が痛くなったのか、膝が痛いから足首の動きが落ちたのかは、この研究からは分かりません。確度は「経験的示唆」にとどまります。
つまり、足首・股関節・膝の動きが連動して落ちている人が多い、というところまでは、研究と動画の考え方が重なります。そのうえで、足首から整える意味は、当院の臨床での見立てです。
動画では、足首の動きの低下が膝の痛みの引き金になっていると考えます。研究で分かるのは、膝の変形性関節症のある人で足首の動きが小さいという関連までです。足首が原因かどうかは、確認できていません。
足首をゆるめる2つのほぐし方は、どう行うのか?
短趾伸筋のほぐし方
- 外くるぶしの斜め前〜下に、親指を当てる
- 2〜4番目の足指へ向かう筋肉の流れをイメージしながら、その流れに沿ってほぐす
- 腫れさせないように、強くなりすぎない力で、3分ほど続ける
短趾伸筋は、硬くなると足首が縮みにくくなる筋肉のひとつと考えています。かかとの骨の角度を整えることで、膝の負担を間接的に減らすのが狙いです。この作用は、院の見解で、未検証です。
後脛骨筋のほぐし方
- ふくらはぎの内側の筋肉と外側の筋肉の間にある溝を探す
- 溝に指を入れ、下のヒラメ筋を通して、奥の後脛骨筋に圧をかける
- ほかの4本の指で、脚全体をしっかり支える
膝に痛みを抱えている方は、この場所に鋭い痛みが出やすい傾向があります。ご自分で行う理由は、ご自分なら痛みを見ながら加減できるからです。他の人にしてもらうと、力任せになり、筋肉を傷めるおそれがあります。
※効果には個人差があります。心地よさが残る強さで行ってください。痛みや違和感が強いときは中止してください。片方のふくらはぎだけが腫れて熱を持つ・赤くなる・急に強く痛むときは、ほぐさずに医療機関を受診してください。妊娠中の方は、強く押さずにかかりつけ医に相談してからにしてください。
ほぐすことは膝の痛みに効くのか?いつまで続けるのか?
動画で話したこと
足首の動きが整うまで、自宅で1〜2週間は毎日続けます。変形性膝関節症は、関節の形が変わっている状態なので、改善には3か月から半年ほどの時間がかかります。いきなり膝だけを整えるのではなく、足首、股関節、全身と段階的に進めます。
研究で分かっていること
膝の変形性関節症へのマッサージを調べた複数の研究をまとめたメタ分析(根拠の質は低〜中程度と評価)では、数週間の時点で痛みやこわばりの軽減が見られ、6〜8週ごろにはこわばりや機能の改善が見られたと報告されています。一方、長期の施術では差が見られませんでした。確度は「経験的示唆」です。ただし、この研究が調べたのは膝へのマッサージで、足首やふくらはぎをほぐした場合の研究ではありません。
動画では、足首から段階的に整え、3か月から半年かけて改善を目指すと紹介しました。研究で改善が確認されたのは、膝へのマッサージの数週間〜8週ごろまでで、長期では差がありませんでした。足首をほぐすことで膝の痛みが和らぐかどうか、3か月から半年という期間の目安は、研究では確認できていません。
セルフケアで改善しない場合は
膝の腫れ・熱感が強い、夜間や安静にしていても痛む、急に強い痛みが出た、膝が急に動かなくなった、といった場合は、整形外科での診察をおすすめします。足首のほぐしは、診察や治療の代わりにはなりません。
当院では、足首や股関節を含めた全身の動きと筋肉の状態を確かめながら、鍼灸で整えていきます。ひとりで抱えず、お気軽にご相談ください。
よくある質問
足首の動きが悪いかどうかは、どう確かめますか?
足首をつま先側から膝に近づける動き(背屈)を、左右の脚で比べます。膝を伸ばした状態と曲げた状態の両方で行い、動きにくさや引っかかりがあれば、足首の動きが落ちているサインと考えます。自分では分かりにくいときは、ご家族に足先を動かしてもらうと比べやすくなります。
短趾伸筋のほぐしは、どのくらいの強さと時間で行いますか?
動画では、腫れさせない程度の強さで、1回3分ほどが目安と紹介しました。外くるぶしの斜め前を親指で押さえ、2〜4番目の足指へ向かう筋肉の流れに沿ってほぐします。痛みが強いときは力を弱めてください。
後脛骨筋のほぐしは、人にやってもらってもいいですか?
ご自分で行うことをおすすめします。ここは鋭い痛みが出やすい場所で、他の人に力任せにされると筋肉を傷めるおそれがあるためです。自分でなら、痛みを見ながら加減できます。
足首をほぐせば、膝の痛みは和らぎますか?
足首の動きと膝の変形性関節症が関連するという報告はありますが、足首をほぐすことで膝の痛みが和らぐかどうかは、確かめた研究を確認できていません。当院の臨床では足首から整える意味があると考えていますが、効果には個人差があります。
どのくらい続ければいいですか?
動画では、足首の動きが整うまで、1〜2週間は毎日続けると紹介しました。変形性膝関節症は変化に時間がかかるため、全体を整えるには3か月から半年ほどかかることもあります。ただし、この期間の目安を確かめた研究は確認できていません。
ふくらはぎを押すときの注意点はありますか?
強く押しすぎず、心地よさが残る強さで行ってください。片方のふくらはぎだけが腫れて熱を持つ、赤くなる、急に強く痛むといった場合は、ほぐさずに医療機関を受診してください。妊娠中の方は、強く押さずにかかりつけ医に相談してからにしてください。
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膝・足首のセルフケア
監修
木もれび鍼灸院/ツボ塾 代表
弓削 周平(ゆげ しゅうへい)
- 鍼灸師(はり師・きゅう師)
- 日本東洋医学会会員
- 2002年 明治東洋医学院専門学校卒業
- 2011年 長春中医薬大学卒業(中医学士)
- 2014年 木もれび鍼灸院開業
参考文献
- Matsumura M, Usa H, Ogawa D, et al. Pelvis/lower extremity alignment and range of motion in knee osteoarthritis: A case-control study in elderly Japanese women. J Back Musculoskelet Rehabil. 2020;33(3):515-521. DOI / PubMed
- Wu Q, Zhao J, Guo W. Efficacy of massage therapy in improving outcomes in knee osteoarthritis: A systematic review and meta-analysis. Complement Ther Clin Pract. 2022;46:101522. DOI / PubMed

