半夏厚朴湯と半夏泻心湯:咽喉頭異常感症とみぞおちの不快感に使用する漢方薬を解説

半夏瀉心湯と半夏厚朴湯は、いずれも伝統的な中国の漢方処方であり、主成分として半夏を使用していますが、目的とする治療効果や含まれる他の成分において異なります。これらの違いを理解してきましょう。

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半夏瀉心湯

  • 成分: 半夏、黄芩、乾姜、人参、炙甘草、黄連、大棗
  • 目的: 和胃降逆、開結除痞。
    主に胃気の不和による心下痞满(胃脘部の不快感や満腹感)、干呕または嘔吐、腸鳴下痢(腸の鳴りと下痢)、舌苔薄黄で腻、脈弦数などの症状を治療します。この処方は、特に小柴胡湯の証に誤って下剤を用いた後の中陽損傷や外邪が侵入して寒熱が互いに結びついた状態を治療するために用いられます。

半夏厚朴湯

  • 成分: 半夏、厚朴、茯苓、生姜、蘇葉
  • 目的: 行気散結、降逆化痰。
    主に梅核気(喉に物が詰まった感じ、痰が出せず、飲み込めない感じ)、胸脇満闷(胸や脇の苦しさ)、咳や吐き気などの症状を治療します。この処方は、情緒の不調や肝気の郁結、肺胃の宣降失調によって生じた痰と気の互いの結びつきに対処するために用いられます。

半夏瀉心湯と半夏厚朴湯の主な違い

  • 治療目的: 半夏瀉心湯は胃気の不和とそれに伴う症状を中心に治療し、特に誤った下剤使用後の影響を修復することに焦点を当てています。
    一方、半夏厚朴湯は気の滞りと痰の結びつき、特に喉の違和感や胸の苦しさに対処します。
  • 成分の違い: 両方の処方に半夏が含まれていますが、半夏瀉心湯には黄芩、干姜、人参、炙甘草、黄連、大枣が含まれ、胃の和合と逆行の降下に重点を置いています。
    半夏厚朴湯には厚朴、茯苓、生姜、蘇葉が含まれ、気の行き渡りを良くし、痰を化して逆行を降ろすことに焦点を当てています。

半夏:自然の恵み、むかごの魅力を再発見

 半夏、この古くから伝わる漢方の素材は、実は私たちの身近な自然の恵み、むかごに他なりません。
むかごと聞くと、山の幸や秋の味覚を思い浮かべるかもしれませんが、漢方医学ではその価値をさらに深く掘り下げ、健康と調和のための素材として重宝されています。今回は、この神秘的な植物の魅力を、紹介します。

むかごの秘密

 むかご(半夏)は、天南星科に属する多年生草本植物です。
その小さな塊茎は、地下でひっそりと力を蓄え、春が来ると緑の葉を地上に展開します。しかし、その地味な外見の下には、強力な薬効が隠されています。
半夏は、辛く、温かい性質を持ち、脾、胃、肺の経絡に作用するとされ、湿を乾燥させ痰を化し、逆を降ろして嘔吐を止めるなど、多岐にわたる効能を持っています。

半夏の採取と加工

 半夏は、夏から秋にかけてが採取期。
この時期、むかごはエネルギーをたっぷりと蓄えています。採取後は、外皮と根を丁寧に取り除き、日光で乾燥させることで生半夏が完成します。
中国では、生のままのむかごは有毒とされており、生姜や明礬などで加工することで、その毒性を減らし、安全に利用できる「制半夏」に加工して食用としています。この加工過程でむかごの薬効が高まると考えられています。

半夏を楽しむ

 半夏は、その薬効だけでなく、文化的な側面も持ち合わせています。
例えば、半夏生(はんげしょう)は、旧暦の5月半ばごろを指し、この時期に半夏が最も力を持つとされています。また、半夏を用いた漢方薬は、半夏厚朴湯や半夏瀉心湯など、さまざまな処方があり、それぞれ特定の症状に対応しています。

まとめ

 半夏、この小さなむかごには、大きな可能性が秘められています。
自然界からの贈り物を、私たちはどのように受け取り、活用するか。その一つの答えが、半夏を通じて見出されるかもしれません。健康は自然との調和から生まれるということを、半夏は静かに教えてくれているのです。

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