2024-2025 インフルエンザA型大流行に対し、傷寒論と温病学を組み合わせた新しい漢方アプローチ

新しい漢方アプローチ

2024年ー2025年 2024年のインフルエンザA型の大流行に際して、有効な漢方薬処方について

2024年の11月から徐々にインフルエンザA型が流行し始め、年末には発熱外来を設けている病院に患者が殺到しカオスのような状態となっている。
また医薬品の不足もあいまって、咳止め、痰切りなどの風邪症状を軽減する西洋薬が足りなくなってしまい、医療難民となった人がネット上で漢方薬の情報を求める声が渦巻いている

実際にネット上の有識者が発信している漢方薬を検証していみると、傷寒論をベースとした麻黄湯や葛根湯などを勧めていることが多く、コロナ禍を経験した日本漢方がパンデミックを引き起こす感染症に対してアップデートできていない現状がある。

近年の感染症の症候分析において、『傷寒論』の六経弁証のみでは十分な対応が難しいという見方がある。
これは、インフルエンザがウイルス性感染症として、多様な臨床症状を示し、ウイルスの変異、個人の体質差、環境要因などの影響を受けやすいためだ。

六経弁証の利点:
発熱、悪寒、頭痛などの典型的な外感症状に対して、麻黄湯や桂枝湯などの古典的処方による明確な治療方針を提供できる。
限界:
現代のインフルエンザウイルスは、湿熱や温毒など複雑な病機を示すことがあり、従来の六経弁証の範囲を超えています。熱性のインフルエンザには、温病学説における衛気営血弁証や三焦弁証がより適切である。

現代の漢方薬のアプローチ:
複数の弁証方法を組み合わせた総合的な診断
寒性には『傷寒論』の処方、熱性には銀翹散や桑菊飲などの温病学派の処方を使用

現代医学の検査結果を参考にした精密な弁証施治の実施

結論として、『傷寒論』の六経弁証は重要な医学的遺産ですが、現代の感染症に対しては、他の弁証方法や現代医学の知見と組み合わせることで、より効果的な治療が可能となる

2024年のインフルエンザA型の分析

2024年のインフルエンザは2009年のインフルエンザと同じH1N1型であり、現在ちょうど免疫を持っていない人が多く感染拡大が広がっている
実はH1N1型については2009年に中国でも大流行し、軍病院において症候分析がまとめられている

ここまで読んでもらった方には申し訳ないが、日本の病院で処方されるエキス剤はインフルエンザには対応できない
毎年流行する感染症には傾向があり、傾向ごとに生薬処方の微調整をして対応する必要がある

日本で対応するには生薬を購入し、自宅で煎じて漢方薬を作るのが最も効果が高い

予防としての漢方薬

1.一般的な人
インフルエンザA型1号方:益気固表,化湿清熱
処方:黄芪20g、藿香10g、葛根15g、防風10g、板藍根15g

2.陽虚体質向け
インフルエンザA型2号方:温陽固表
処方:黄芪20g、桂枝10g、白芍15g、白朮10g、防風10g、葛根15g

3.陰虚体質向け
インフルエンザA型3号方:滋陰清熱
処方:沙参15g、麦冬10g、百合15g、陳皮10g、炒麦芽15g、薄荷5g

4.湿盛体質向け
インフルエンザA型4号方:化湿醒脾
処方:藿香10g、厚朴10g、法半夏10g、陳皮10g、茯苓15g、蘇葉10g

治療による漢方薬

1.毒襲肺衛
症状:発熱、悪寒、咽痛、頭痛、筋肉痛、咳嗽
治法:清熱解毒,宣肺透邪
処方:炙麻黄、杏仁、生石膏、柴胡、黄芩、牛蒡子、羌活、生甘草
常用中成薬:连花清瘟胶囊、银黄类制剂、双黄连口服制剂


2.毒犯肺胃
症状:発熱、悪寒、悪心、嘔吐、腹痛下痢、頭身筋肉痛
治療:清熱解毒,化湿和中
処方:葛根、黄芩、黄連、蒼朮、藿香、姜半夏、蘇葉、厚朴
常用中成薬:葛根芩连微丸、藿香正气制剂


3.毒壅気営
症状:高熱、咳嗽、胸悶、呼吸困難、煩躁不安、重症では神昏譫語
治療:清気涼営
処方:炙麻黄、杏仁、瓜蒌、生大黄、生石膏、赤芍、水牛角
常用中成薬:必要时可选用安宫牛黄丸以及痰热清、血必净、清开灵、醒脑静注射液

まとめ

現状の課題:

  • 従来の傷寒論ベースの処方(麻黄湯、葛根湯など)だけでは対応が不十分
  • 現代のインフルエンザは複雑な病態を示すため、複合的なアプローチが必要
  • 医薬品不足により西洋薬が入手困難

重要ポイント:

  • エキス剤より生薬の煎じ薬が効果的
  • 六経弁証に加え、温病学説の知見を活用
  • 毎年の流行傾向に応じた処方調整が必要
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