【膝の痛み】股関節のほぐし方|お腹をゆるめるセルフケアと研究

【膝の痛み】股関節のほぐし方|お腹をゆるめるセルフケアと研究 運動器・整形外科

この記事の結論

膝が痛いときの股関節は、股関節そのものを動かすのではなく、動きが硬い側のお腹(臍の高さで、臍から2〜3cm外側)の筋肉をゆるめて、股関節が動きやすい状態を目指します。前回の足首に続き、今回は股関節です。お腹をゆるめると股関節が動き、膝が楽になるという流れは、研究ではまだ確かめられておらず、当院の臨床での経験にもとづく考え方です。

この記事の対象者
膝が痛くて、足が組めない・あぐらがかけない(昔はできた)という方。これは「膝の痛みシリーズ」の2本目(股関節編)で、前回は足首編でした。「膝の痛みの治し方」を全体で知りたい方は、膝のお皿の下からのアプローチを解説した膝蓋下脂肪体アプローチの記事もあわせてご覧ください。妊娠中の方やお腹の手術後の方は、このお腹のケアは行わないでください(詳しくは「お腹を押すときの注意点」へ)。

膝が痛いとき、股関節はどうほぐせばいいのか?

膝が痛いとき、股関節は「動かす」のではなく、お腹の筋肉をゆるめた結果として動きやすくします。硬い側のお腹にある、腹直筋(ふくちょくきん)と内腹斜筋(ないふくしゃきん)の境目あたりを、指で軽く押しながらゆるめます。

お腹の筋肉のゆるめ方(概要)

場所:臍の高さで、臍から2〜3cm外側。腹直筋の外縁にあたるところです。

目的:お腹の筋肉の緊張をゆるめ、結果として股関節が動きやすくなること(当院の臨床での見立て・経験的示唆)。

やり方:仰向けで、硬い側の足を反対の膝の上に乗せ、股関節を約90度に曲げます。腹直筋の外縁から内側へ2cm(最大3cm)指を入れ、10〜15秒ほど押します。

この記事では、大阪の木もれび鍼灸院・院長 弓削周平(鍼灸師・臨床経験27年)が、股関節の硬さの確かめ方、お腹のゆるめ方、安全面の注意、研究で分かっていることを解説します。膝の痛みは、膝だけを見ていても整いにくいことがあります。ひとりで抱え込まなくて大丈夫です。

股関節が硬いかどうかは、どう確かめるのか?

確かめるのは、日常で股関節の動きが落ちていないかどうかです。次のような様子があれば、股関節の動きが落ちているサインと考えます。

  • 足が組めない
  • あぐらがかけない(昔はできたのに、最近はできなくなった)
  • 仰向けで膝を胸に引き寄せると、股関節の前が詰まって痛い
  • 仰向けで膝を立て、そのまま外に倒していくと、途中までしか開かない

動画では、これらを左右で比べると、硬い側が分かりやすいと紹介しました。あぐらが組めないことと股関節の動きについては、腰痛の記事でも触れています。

なぜ膝が痛いのに、股関節を見るのか?

動画で話したこと

膝の痛みは、膝だけでなく、足首や股関節の動きとも関係していると考えます。さらに腰や首など全体を見ないと、整いにくいと話しました。また、痛む膝と反対側の股関節の動きが悪いことが多い、とも話しました。たとえば左膝が痛い方は、右の股関節が硬いことが多い、という見立てです。

研究で分かっていること

内側型の変形性膝関節症のある人と、膝に症状のない人を比べた症例対照研究では、調べたすべての股関節まわりの筋肉で、筋力が低いと報告されています。ただし、筋力の低下が膝の変形性関節症より先にあったのか、後から起きたのかは分からないと、この研究は述べています。確度は「経験的示唆」です。

つまり、膝の痛みのある人は、股関節まわりにも変化が出ている可能性がある、というところまでは、動画の考え方と研究が重なります。そのうえで、股関節の「動き」を整えることの意味は、当院の臨床での見立てです。

動画との違い
動画では、股関節の「動き(硬さ)」と、痛む膝と反対側の股関節が硬いことが多いという左右の関係を話しました。この研究が調べたのは股関節まわりの「筋力」で、動きの硬さや左右の関係は確認できていません。

お腹のどこを、どう押すのか?

場所の探し方

  1. 仰向けになり、臍の高さのお腹を確かめる
  2. 頭を軽く持ち上げる。すると腹直筋が縦に盛り上がる
  3. 盛り上がった腹直筋の外縁で、臍から2〜3cm外側のあたりを探す(腹直筋と内腹斜筋の境目あたり)

場所は、決まった1点ではありません。「だいたいこのあたり」という目安で、腹直筋の外縁を手で感じて確かめます。

押し方の手順

  1. 仰向けで、硬い側の足を反対の膝の上に乗せ、股関節を約90度に曲げる
  2. 指を組み合わせて、腹直筋の外縁から内側へ、2cm(最大3cm)入れる。腹筋の裏側をはがすようなイメージで行う
  3. 臍の高さから、ぐりぐりと動かしながら、3〜5cmほど下まで下ろす。それより下へは行かない
  4. 1回10〜15秒で、いったん離す
  5. あぐらや、膝を胸に引き寄せる動きで、変化を確かめる
硬い側のお腹をゆるめる → あぐら・膝の引き寄せで確認する → 1日1〜2回、毎日続ける

押す側は、動画では硬い側のお腹でした。たとえば左膝が痛く、右の股関節が硬ければ、右のお腹を押します。回数は多ければよいわけではなく、1日1〜2回で十分です。どの筋肉に、どう作用しているかは、確認できていません。

※効果には個人差があります。

お腹を押すときの注意点は?

お腹の下には、腸や内臓があります。強く押したり、やりすぎたりすると、炎症を起こすことがあると、動画でも注意しました。軽い圧から始め、決めた回数と時間を守ってください。

次の方は、このお腹のケアを行わないでください。妊娠中の方、お腹の手術後の方、ヘルニアやお腹の病気がある方です。

押して強い痛みが出る場合や、膝の腫れや熱が強い場合は、中止して医療機関を受診してください。

お腹をゆるめると、なぜ股関節が動くのか?

動画で話したこと

狙いは、股関節そのものを動かすことではありません。お腹の筋肉の緊張をゆるめた結果として、股関節が動くようになり、それによって膝が楽になっていく、という流れを狙います。

研究で分かっていること

お腹の筋肉の緊張をゆるめる介入で、股関節の動きが変わるかどうかを調べた研究は、今回の文献検索では確認できませんでした。そのため、この流れの確度は、当院の臨床経験にもとづく「経験的示唆」です。

動画との違い
動画では、お腹の緊張をゆるめると股関節が動き、膝が楽になる、という流れを話しました。この流れは、研究では確認できていません。どの筋肉がどう働いているかという仕組みも、確かめられていません。

股関節まわりの運動は、膝の痛みに役立つのか?

動画で話したこと

股関節の動きを整えることで、膝が楽になることを狙います。そのために、膝だけでなく、股関節にも目を向けます。

研究で分かっていること

膝の変形性関節症の人に、股関節の外転筋(脚を横に開く筋肉)を鍛える運動を行った研究をまとめたメタ分析では、対照群と比べて、痛みや機能の指標が良かったと報告されています。ただし、まとめに入った質の良い研究は3件で、研究数はまだ多くありません。確度は「経験的示唆」です。

動画との違い
動画では、お腹の筋肉をゆるめて股関節を動きやすくする方法を紹介しました。研究で調べられたのは、股関節の筋肉を鍛える運動で、お腹を押す方法は含まれていません。お腹を押す方法が膝の痛みを和らげるかどうかは、確認できていません。

セルフケアで改善しない場合は

膝の腫れや熱感が強い、夜間や安静にしていても痛む、急に強い痛みが出た、膝が急に動かなくなった、といった場合は、整形外科での診察をおすすめします。お腹のケアは、診察や治療の代わりにはなりません。

当院では、股関節や足首を含めた全身の動きと筋肉の状態を確かめながら、鍼灸で整えていきます。ひとりで抱えず、お気軽にご相談ください。

膝の痛みの鍼灸について

股関節や足首の動きも含めて、膝の状態を見ていきます。気になる点があれば、お問い合わせください。

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よくある質問

股関節が硬いかどうかは、どう確かめますか?

足を組めるか、あぐらをかけるか、仰向けで膝を胸に引き寄せたときに股関節の前が詰まって痛まないか、仰向けで膝を立てて外に倒したときに開くかを見ます。昔はできたことができなくなっているときは、股関節の動きが落ちているサインと考えます。

どちら側のお腹を押しますか?

動画では、痛む膝と反対側の股関節の動きが悪いことが多いと話しました。たとえば左膝が痛い方は右の股関節が硬いことが多く、硬い側である右のお腹を押します。あぐらや膝の引き寄せで左右を比べて、硬い側を決めます。この左右の関係を確かめた研究は確認できていません。

お腹のどこを押せばいいですか?

臍(へそ)の高さで、臍から2〜3cm外側が目安です。頭を持ち上げると腹直筋(お腹の中央を縦に走る筋肉)が縦に盛り上がるので、その外縁を指で確かめ、腹直筋と内腹斜筋の境目あたりを探します。決まった1点ではなく、だいたいこのあたり、という場所です。

押す強さ、時間、回数はどのくらいですか?

動画では、腹直筋の外縁から内側へ2cm、最大でも3cmほど指を入れ、臍の高さから3〜5cm下まで、ぐりぐりと動かしながら下ろすと紹介しました。1回10〜15秒で、1日1〜2回、毎日行って構いません。強く押したり、回数や時間を増やしすぎたりしないでください。

妊娠中の方やお腹の手術後の方など、お腹を押すのを避けたほうがいい人はいますか?

妊娠中の方、お腹の手術後の方、ヘルニアやお腹の病気がある方は、行わないでください。押して強い痛みが出る場合や、膝の腫れや熱が強い場合も中止し、医療機関を受診してください。

お腹をゆるめると股関節が動き、膝が楽になることは、研究で確かめられていますか?

確かめた研究は確認できていません。股関節まわりの筋力を鍛える運動が、膝の変形性関節症の痛みの軽減に有利だったという報告はありますが、お腹を押す方法は調べられていません。当院の臨床では意味があると考えていますが、確度は経験的示唆で、効果には個人差があります。

膝の痛みは、股関節だけ整えればいいのですか?

動画では、膝の痛みは膝だけでなく、足首や股関節、さらに腰や首など全体を見ないと整わないと話しました。足首については、シリーズ1本目の足首編で解説しています。

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監修

木もれび鍼灸院/ツボ塾 代表

弓削 周平(ゆげ しゅうへい)

保有資格
  • 鍼灸師(はり師・きゅう師)
  • 日本東洋医学会会員
経歴
  • 2002年 明治東洋医学院専門学校卒業
  • 2011年 長春中医薬大学卒業(中医学士)
  • 2014年 木もれび鍼灸院開業

参考文献

  1. Hinman RS, Hunt MA, Creaby MW, et al. Hip muscle weakness in individuals with medial knee osteoarthritis. Arthritis Care Res (Hoboken). 2010;62(8):1190-3. DOI / PubMed
  2. Thomas DT, R S, Prabhakar AJ, et al. Hip abductor strengthening in patients diagnosed with knee osteoarthritis – a systematic review and meta-analysis. BMC Musculoskelet Disord. 2022;23(1):622. DOI / PubMed

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