この記事の結論
膝が痛いとき、その場で楽に感じることのある一番簡単なセルフケアは、足首から下を内に入れたまま、痛みのない範囲で膝を曲げる方法です。ただし、動画でも「楽にはなるが、根本的な解決としては弱い」とはっきりお伝えしています。1回で変わると約束するものではなく、痛みが強くなったときの一時的なケアとして使い、そのあとに足首や筋肉の緊張へのケアにつなげてください。
膝が痛くて、今すぐ少しでも楽になる方法を探している方。整形外科で変形性膝関節症と言われた方。膝が腫れている、熱を持っている、ケガのあとから痛む、夜も強く痛むという方は、このセルフケアの前に整形外科を受診してください。膝の痛みを積極的に整えていくセルフケアは、膝蓋下脂肪体アプローチの記事をご覧ください。
この記事では、大阪の木もれび鍼灸院・院長 弓削周平(鍼灸師・臨床経験27年)が、動画で紹介した「一番簡単な膝のセルフケア」の手順、研究で分かっていること、そして一時的なケアにとどまる理由を解説します。
「即効性のあるセルフケア」を探している方は、とても多いと思います。安心してください。痛みが強いときに、まず楽にしたいと思うのは自然なことです。このページでは、その気持ちに答えながら、できることとできないことを正直にお伝えします。
膝が痛いとき、すねの骨はどうずれているのか?
動画で話したこと
膝が痛い方は、太ももの骨と、膝から下のすねの骨の位置が少しずれていることが結構多い、と動画では話しました。膝のお皿とすねの骨を触ると、すねの骨は外側に傾いていて、角度が違います。これは正常な状態です。そして変形性膝関節症が進んでいく方は、この外側への角度がさらに強くなっている、と紹介しました。
研究で分かっていること
変形性膝関節症の方と健常な方の歩き方を3次元で測定した研究があります。内側型の変形性膝関節症の方は、膝が内側に寄る角度が大きく、歩いている途中のすねの骨は、健常な方のように内側へ回りにくい傾向が報告されています。ただし、これは歩行中の動きを比べた観察研究で、すねの骨の角度と痛みの強さの関係を調べたものではありません。確度としては「経験的示唆」にあたります。
「傾き」には2つの意味がある
「すねの骨が外側に傾いている」という言い方には、実は性質の違う2つの話が混ざりやすいため、整理しておきます。ここは確立した解剖学の内容です。
- Q角(キューかく):骨盤から膝のお皿の中心へ引いた線と、お皿の中心からすねの骨の出っ張り(脛骨粗面)へ引いた線がつくる角度です。お皿とすねの骨の「位置関係」を表します。
- 脛骨回旋(けいこつかいせん):すねの骨が、自分の長い軸を中心に、内側や外側へねじれる動きや向きです。足先が内を向くか、外を向くかに表れます。
動画では「膝のお皿とすねの骨を触ると、すねの骨が外側に傾いて角度が違う」と話しています。お皿とすねの骨の位置関係をみている点では、Q角に近い見方です。一方で、セルフケアの動きは、足首から下を内に入れる=すねの骨を内側へ回す、という回旋の動きです。つまり、動画は「位置関係を目印にして、回旋の動きで整える」という組み立てになっています。触っただけでは、Q角の変化と回旋の変化を区別することは難しいため、「角度が内に入った」という感覚は、あくまで目安として受け止めてください。今回取得した研究にも、Q角と脛骨回旋を分けて比べたものは見つかりませんでした。
一番簡単なセルフケア:すねを内に入れて曲げるには?
動画で紹介した手順
- 脚を伸ばした状態から、膝の少し上の太ももを、軽い力で手でつかんで固定します。
- 足首から下を、内側に入れます(足先を内に向けるイメージです)。
- 太ももを手で固定したまま、足を内に入れた状態で、膝を曲げていきます。
- 痛みのない範囲まで曲げます。痛みがない方は、奥まで曲げてかまいません。
- 曲げたところで、足を内に入れている力を抜き、脱力したまま膝を伸ばします。
- これを約5回くり返します。
- 終わったら、膝のお皿とすねの骨の位置をもう一度確認し、角度が内に入っているかを確かめます。そのあとで膝を曲げて、曲げやすさを確かめます。
動画では、終わったあとに「軽く曲がると思います」と話しています。感じ方には個人差があります。
※痛みが強くなるときは、無理をせず中止してください。曲げている途中で痛む場合は、痛みのない範囲で止めてください。
なぜその場で楽になるのか?
動画で話したこと
膝が痛い方は、すねの骨の外側への角度がきつくなっているので、内に入れてあげると膝にかかる負担が減り、その結果、痛みが楽になる、と動画では説明しました。
研究で分かっていること
内側型の変形性膝関節症の方を対象に、すねの骨を内旋させた状態でのレッグプレス運動と、すねの骨を中立にした状態のレッグプレスを比べた試験があります。1回のセッションのあとで、内旋させた群は、評価した項目すべてで改善がみられました。中立の群は、10メートル歩行だけでした。ただし、これは「1回の運動直後の変化」を調べた試験で、動画のセルフケアそのものではありません。また、膝の負担や関節の変化といった「なぜそうなるか」は測っていません。確度としては、効果は「経験的示唆」、仕組みは「機序的仮説」にとどまります。
動画の説明と、この試験は方向が一致しています。すねの骨を内に向けた状態で動くと、その場で楽に感じる方がいる、という点です。一方で、「どの部分の負担がどう変わるから楽になるのか」は、まだ分かっていません。次の見出しで、その点を正直にお伝えします。
「内に入れると膝の負担が減る」は、本当なのか?
動画で話したこと
すねの骨を内に入れてあげることで、膝にかかる負担が減る、と動画では話しました。
研究で分かっていること
膝の内側と外側にかかる圧力が、すねの骨の回旋でどう変わるかを調べた実験があります。この実験では、すねの骨を内旋させると、膝の内側の接触圧が増え、外旋させると、内側の接触圧が減る場面があったと報告されています。確度は「機序的仮説」の段階で、この実験は膝に荷重をかけた条件のものです。
動画では「内に入れると膝の負担が減る」と話しましたが、この実験では、内旋で膝の内側の圧が増える方向の結果でした。実験の対象や条件は抄録からは確認できず、体重をかけた状態の実験なので、動画のセルフケア(太ももを固定して曲げる動き)にそのまま当てはめることはできません。「負担が減るから楽になる」と言い切れる根拠は、今回の研究では確認できませんでした。その場で楽に感じる理由は、負担の変化だけでなく、動かすこと自体の影響など、ほかの要因も考えられます。
この点は正直にお伝えしておきたいところです。セルフケアで楽になる方がいることと、その理由が分かっていることは、別の話です。「負担が減る」という説明は、今のところ仮説として受け止めてください。
楽になっても根本解決にならない理由は?
動画で話したこと
動画では、このセルフケアは簡易的なもので、他の筋肉の緊張や、足首の硬さを解消していかないと、膝の痛みは根本的には取れない、と話しました。痛みがきつくなったときに一時的にこのケアを行い、痛みをある程度落ち着かせた状態で、概要欄にある他のセルフケアに取り組んでほしい、という位置づけです。
研究で分かっていること
膝の変形性関節症に対する徒手療法(手で関節や筋肉に働きかける方法)のメタ分析では、通常のケアや運動療法と比べて、数週間ほどの短期の痛みの軽減で上回る可能性が報告されています。ただし、研究の質は低く、長期の効果については慎重に考える必要があるとされています。重い有害事象は報告されていません。確度は「経験的示唆」で、動画のセルフケアそのものを調べた研究ではありません。
動画の「一時的に楽にするが、根本解決は弱い」という位置づけは、研究の見方とも矛盾しません。短期の変化は期待できても、長く続くかどうかは確かめられていない、というのが現時点の状況です。
では、その先に何をするのか。動画では、足首の硬さと、他の筋肉の緊張を挙げています。足首の硬さが膝の痛みに関わる、というのが動画での考え方です。この足首の硬さと膝の痛みの関係を直接調べた研究は、今回の取得では見つかりませんでした。そのため、ここは研究で確認できたこととしてではなく、動画で紹介した考え方としてお読みください。足首のほぐし方は、膝が痛いとき、足首はどうほぐせばいいのかで解説しています。
※膝の裏の緊張と足首の硬さについては、足首が硬い原因は膝の裏!委陽穴で転倒予防もあわせてご覧ください。
セルフケアで改善しない場合は
痛みを我慢して動かし続けると、日常の動きが減り、さらに動きにくくなることがあります。一人で抱えなくても大丈夫です。次のような場合は、セルフケアを続ける前に、整形外科の受診をおすすめします。
- 膝が腫れている、熱を持っている
- ケガや転倒のあとから痛みが出た
- 夜、じっとしていても強く痛む
- 膝が引っかかって動かなくなる、急に力が抜ける
- 発熱を伴う
セルフケアを繰り返しても痛みが戻る方、歩きにくさが続く方は、鍼灸という選択肢もあります。
よくある質問
膝の痛みに、1回でその場で楽になるセルフケアはありますか?
動画で紹介したセルフケアで、その場で楽に感じる方はいます。ただし、感じ方には個人差があり、1回で変わると約束できるものではありません。また、このセルフケアは一時的に楽にするためのもので、根本的な解決をめざすものではありません。
このセルフケアは、どんな膝の痛みに向いていますか?
動画では、変形性膝関節症などで膝が痛い方を想定して紹介しました。膝が腫れている、熱を持っている、ケガのあとから痛む、夜間も強く痛むといった場合は、セルフケアの前に整形外科を受診してください。
痛みがあるのに、膝を曲げても大丈夫ですか?
痛みのない範囲までで止めてください。動画でも、痛みがない範囲まで曲げると説明しています。曲げている途中で痛みが強くなるときは、無理をせず中止してください。
何回くらい行えばいいですか?
動画では、足を内に入れて曲げ、力を抜いて伸ばす動きを約5回くり返しています。1日に何回行うかといった頻度は動画では示しておらず、研究でも確認できていません。痛みが強くなったときの一時的な対処として使い、痛みが続くときは相談してください。
研究では、徒手療法で膝の痛みは楽になるといえますか?
膝の変形性関節症を対象にしたメタ分析で、徒手療法は通常ケアや運動療法より、数週間ほどの短期の痛みの軽減で上回る可能性が報告されています。ただし研究の質は低く、長期の効果は慎重に考える必要があるとされています。動画のセルフケアそのものを調べた研究ではありません。
楽になったあとは、何をすればいいですか?
動画では、足首の硬さや他の筋肉の緊張を解消するセルフケアに進むことを勧めています。痛みが少し落ち着いた状態で取り組むと、行いやすくなります。当院の足首のセルフケアの記事もご覧ください。
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膝の痛みのセルフケア
監修
木もれび鍼灸院/ツボ塾 代表
弓削 周平(ゆげ しゅうへい)
- 鍼灸師(はり師・きゅう師)
- 日本東洋医学会会員
- 2002年 明治東洋医学院専門学校卒業
- 2011年 長春中医薬大学卒業(中医学士)
- 2014年 木もれび鍼灸院開業
参考文献
- Bytyqi D, Shabani B, Lustig S, et al. Gait knee kinematic alterations in medial osteoarthritis: three dimensional assessment. Int Orthop. 2014;38(6):1191-8. PubMed/DOI
- Hanada K, Hara M, Hirakawa Y, et al. Immediate effects of leg-press exercises with tibial internal rotation on individuals with medial knee osteoarthritis. Physiother Res Int. 2018;23(4):e1725. PubMed/DOI
- Yazdi H, Mallakzadeh M, Sadat Farshidfar S, et al. The effect of tibial rotation on knee medial and lateral compartment contact pressure. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2016;24(1):79-83. PubMed/DOI
- Zhu B, Ba H, Kong L, et al. The effects of manual therapy in pain and safety of patients with knee osteoarthritis: a systematic review and meta-analysis. Syst Rev. 2024;13(1):91. PubMed/DOI

