【耳鳴り】耳鼻科で「異常なし」とは?|原因はアゴにある|3つのセルフケア

【耳鳴り】耳鼻科で「異常なし」とは?|原因はアゴにある|3つのセルフケア 耳鼻咽喉科

こんなお悩みありませんか?

耳鳴りが気になって耳鼻咽喉科を受診したのに、聴力検査でも画像検査でも異常が見つからず、「様子を見ましょう」と言われただけで終わってしまった。そんな経験はありませんか。難聴をともなわない耳鳴りの中には、耳そのものではなく、顎関節と「かむ筋肉」の緊張が深く関わっているタイプがあります。

動画解説

今回の動画では、耳の前にある顎関節の左右差をご自身で確かめる方法と、顎を牽引してゆるめるストレッチ、口の開きを左右で整える運動、そして側頭筋・咬筋のセルフマッサージまでを実演しています。この記事では、動画では触れきれなかった「なぜ顎の緊張が耳鳴りとつながるのか」という背景を、現代医学と東洋医学の両面から詳しく解説します。

なぜこの症状が起こるのか?その根本原因

現代医学から見た原因

顎関節症や咀嚼筋(そしゃくきん:かむための筋肉)の機能障害と耳鳴りが同時に起こりやすいことは、複数の疫学研究とメタアナリシス(複数の研究をまとめて解析する手法)によって、統計学的に確立した関連として報告されています。また耳鳴りのある方に大きく口を開けてもらったり、強く食いしばってもらったりすると、耳鳴りの音量や音の高さがその場で変化する現象が、多くの方で再現性をもって観察されています。これは「体性感覚性耳鳴り」と呼ばれています。

  • 脳幹での情報の合流:顎の筋肉や関節から送られる感覚の信号は、三叉神経を通って脳幹に入り、聴覚の最初の中継地点である蝸牛背側核(かぎゅうはいそくかく)へ合流します。この合流点で信号のバランスが崩れると、実際には音が鳴っていないのに音として感じられることがあると考えられています。ただし、この仕組みの詳細は動物実験で確かめられた段階であり、ヒトの脳幹で直接測定することは現時点では困難です。
  • 中耳の筋肉との連動(有力な仮説):咬筋・側頭筋などのかむ筋肉と、中耳にある鼓膜張筋(こまくちょうきん)は、発生の由来が同じで、同じ三叉神経の枝に支配されています。そのため、かむ筋肉の過緊張が鼓膜張筋にも波及し、耳の詰まった感じや低い音の耳鳴りにつながる可能性が指摘されています。
  • 睡眠中の食いしばり:かみしめる力は成人で100〜140kg程度に達することがあります。起きている間は無意識に制御されていますが、睡眠中はその制御がはたらきにくく、朝起きたときに顎がだるい、疲れているという状態が生じます。一日のうち最も長く顎に負荷がかかる時間帯です。
  • 左右差:口を大きく開けたときに片側だけ音が鳴る場合、鳴る側は動きが大きすぎ、鳴らない側は動きが硬くなっていることが多くみられます。この左右のアンバランスが、顎まわりの負担を一方に偏らせます。

なお、めまいをともなう、急に聞こえが悪くなった、片耳だけ強い難聴があるといった場合は、内耳や中枢の疾患が隠れていることがあります。まずは耳鼻咽喉科での診察を受けてください。

東洋医学から見た根本原因

東洋医学では、耳は腎とのつながりが深い器官とされる一方で、耳のまわりは胆経・三焦経・小腸経といった経絡が通る場所でもあります。食いしばりや歯ぎしりは、思い悩みや緊張が長く続いたときの「肝気の停滞(かんきのていたい:気のめぐりがつかえた状態)」として現れやすく、その結果、頭頸部の気血のめぐりが滞ります。滞りが耳のまわりに及ぶと、耳鳴り・耳の詰まり・こめかみの張りといった症状として表面化すると考えます。つまり、耳だけを診るのではなく、顎・首・呼吸・情志(感情のありよう)まで含めて全体のめぐりを整えることが、この種の耳鳴りへの向き合い方になります。

症状改善への具体的なアプローチ

今すぐできるセルフケア

まず顎の左右差をチェックする

耳の穴の前にある「耳珠(じじゅ)」というふくらみの、さらに前に人差し指と中指を置きます。その状態でできるだけ大きく口を開けてみてください。どちらか片側だけ、ゴリゴリという感触やボコンとした動きを感じることがあります。音が鳴る側は動きが大きすぎる側、鳴らない側は動きが硬い側です。ケアの対象は音が鳴っていない、硬い側になります。

1. 顎の牽引ストレッチ(左右各45秒)

手のひらの親指側のふくらみ(母指球)と小指側のふくらみ(小指球)を、顎の角(下顎角)のボコッとした部分に当てます。口を半開きにしたまま、腕の重みくらいのやさしい力で、顎全体をゆっくり下に引き下ろします。強い力は必要ありません。片側ずつ、45秒ずつ行います。顎の内側にある外側翼突筋・内側翼突筋がゆるんでいきます。

2. 口の開きを左右で整える拮抗運動(45秒)

顎の下に指を当て、下から上へ軽く押さえます。その抵抗に逆らうように、口をゆっくり開けていきます。指の力と口を開ける力を釣り合わせた状態を、45秒ほど保ちます。

3. 側頭筋・咬筋のセルフマッサージ(各30秒)

手を猫の手の形にして、指を曲げたときに平らになる面を使います。まずこめかみの生え際を、円を描くように30秒ほぐします。歯をカチカチと鳴らしたときに盛り上がる部分が側頭筋です。次に咬筋へ移ります。顎の角から3〜4cmほどの範囲を、同じく30秒ほぐします。強くやりすぎる、長くやりすぎると筋肉を傷めてかえって硬くなります。30秒程度で十分です。

生活習慣の見直し

日中、気づいたときに上下の歯が接していないかを確認してみてください。安静時は上下の歯が軽く離れているのが本来の状態です。また、いびきや無呼吸を指摘されたことがある方は、睡眠中の舌根沈下(ぜっこんちんか:舌が喉に落ち込む状態)が顎まわりの緊張と関係していることがあり、医科での相談もあわせて検討する価値があります。

専門的な鍼灸治療のアプローチ

鍼灸治療の特徴

セルフケアで届くのは、主に体表に近い側頭筋・咬筋です。一方で、顎の深部にある外側翼突筋や、顎の緊張の背景にある首の深層筋・自律神経の乱れまでは、手指では十分に届きません。木もれび鍼灸院では、咀嚼筋の左右の緊張バランスを整えながら、食いしばりを生み出している背景(呼吸の浅さ、慢性的な緊張状態、睡眠の質)まで含めて全体を調整していきます。

治療の流れ

問診で耳鳴りの性質・出現のしかた・顎や睡眠の状態をうかがい、脈診・腹診で体質を確認します。そのうえで治療プランをご提案し、セルフケアの指導とあわせてフォローアップしていきます。

患者様からよくいただくご質問

Q1. 耳鼻咽喉科で異常なしと言われました。それでも鍼灸で変化はありますか?
顎の動きや食いしばりによって耳鳴りの感じ方が変わるタイプであれば、顎と首へのアプローチによって改善が期待できるケースがあります。まずはご相談ください。

Q2. セルフケアはどのくらい続ければよいですか?
一度で楽になる方もいれば、数週間かけて変化していく方もいます。1日1〜2回、無理のない範囲で継続することをおすすめします。強さより頻度と丁寧さが大切です。

Q3. やってはいけないケースはありますか?
顎関節に強い痛みがある、口が開かない、開けると激痛が走るといった場合は自己判断でのマッサージは避け、歯科口腔外科などの受診をご検討ください。また、めまいや急激な聴力低下をともなう場合は、耳鼻咽喉科での診察を優先してください。

まとめ:健やかな毎日を取り戻すために

難聴をともなわない耳鳴りは、耳の検査だけでは原因がはっきりしないことが少なくありません。しかし、顎の左右差を確かめ、翼突筋・側頭筋・咬筋の緊張を整えていくことで、耳にかかる負担が軽くなり、耳鳴りの感じ方が変わってくる方が一定数いらっしゃいます。「異常なし」で終わってしまった方こそ、一度ご自身の顎の状態を確かめてみてください。

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参考文献

  1. Shore SE, Roberts LE, Langguth B. Maladaptive plasticity in tinnitus — triggers, mechanisms and treatment. Nature Reviews Neurology. 2016;12(3):150-160. リンク