この記事の結論
お腹の張りやげっぷが続いても、腸カンジダが原因である可能性は高くありません。カンジダは健康な人の腸にもいる常在菌(もともと体にすみついている菌)で、便検査で見つかっただけでは病気とは言えません。あなたのせいではありませんし、ちゃんと理由があります。どうか一人で抱え込まないでください。
お腹の張り・げっぷ・ガスが続き、「腸カンジダかもしれない」と不安になっている方、便検査や遅延型アレルギー検査を勧められた方に向けた記事です。呑気症(空気を飲み込むことで張りやげっぷが出る状態)については 呑気症(空気嚥下症)の鍼灸治療について もご覧ください。血便や体重の減少などがある方は、記事後半の「こんなときは消化器内科へ」をご確認ください。
便検査でカンジダが見つかったら、腸カンジダなのですか?
いいえ、見つかっただけでは腸カンジダとは言えません。カンジダは、口の中や腸などにもともといる菌です。健康な人でも持っているため、便検査で見つかる人は少なくありません。名前に「カンジダ」とつくだけで不安になりますが、まず安心してください。
動画で話したこと
ほとんどの人は腸カンジダにはなっていません。体の中にカンジダ菌がいる可能性は非常に高く、それはごく普通のことです。便の検査で見つかることと、腸で増えて問題になっていることは別です。
研究で分かっていること(確度:確立した生理学)
2009年の総説では、酵母(カンジダを含む真菌の仲間)は健康な成人の腸に多くみられるとされています。腸の粘膜に酵母が感染しているかどうかの臨床的な意味は、はっきりしていないとも述べられています。
また、健康な成人の便・唾液・食事を調べた研究では、便から検出される真菌の多くは、食べ物や口の中にもいるものでした。便から見つかった真菌が、腸に定着しているのか、通り過ぎているだけなのかは、区別して考える必要があります。
この記事では、大阪の木もれび鍼灸院・院長 弓削周平(鍼灸師・臨床経験27年)が、腸カンジダ、便検査、遅延型アレルギー検査をどう考えればよいかを、研究と合わせて解説します。
以前通っていた方から、「腸カンジダと診断され、サプリメントや高額な薬を続けているうちに体重が減ってしまった」というご相談をいただくことがあります。そのため、不安だけが先に大きくならないよう、この動画と記事を作りました。
腸でカンジダが問題になるのは、どんなときですか?
腸でカンジダが問題になるのは、免疫の働きが大きく落ちているときや、抗菌薬(細菌を抑える薬)を長く使ったときなど、限られた場合です。ふつうに生活できていて、免疫が保たれている方の「お腹の張り」や「げっぷ」を、腸カンジダで説明することは多くありません。
動画で話したこと
HIV感染症(エイズ)、がん、糖尿病などで免疫が著しく落ちている方では、食道などでカンジダが増えることがあります。また、慢性的な膀胱炎などで抗菌薬を長く飲み続け、腸内のバランスが崩れて腸カンジダになるケースもあります。ただし、いずれも非常にまれです。
研究で分かっていること(確度:確立した生理学)
先ほどの総説では、粘膜のカンジダ感染は、体の防御が弱まったときなどに起こるとされています。腸のカンジダを取り除く治療が勧められるのは、はっきり定められた一部の場合だけ、とも述べられています。
腸でカンジダが増えているかどうかは、便に含まれていたかだけでは判断できません。内視鏡で組織をとって調べる(生検)、腹痛の強さや便の状態を確認する、といった症状や検査の結果をあわせて、医師が判断します。
遅延型(IgG)食物アレルギー検査や高額サプリメントは、どう考えればよいですか?
遅延型(IgG)食物アレルギー検査で陽性が出ても、その食品が不調の原因だとは限りません。陽性になった食品をすべて除くと、食べられるものが減って栄養が足りなくなるおそれがあります。自己判断で除く前に、検査を受けた経緯とあわせて、消化器内科で相談してください。
動画で話したこと
IgGの検査は、その食品を食べている量が多いほど陽性になります。アレルギー症状が出ているかを調べる検査ではありません。小麦やトマト、りんごなど、陽性になった食品をすべて除いた結果、食べるものが減って栄養が不足している方も少なくありません。
研究で分かっていること(確度:学会の声明に基づく見解。IgG検査に基づく除去食の有効性は未検証)
カナダのアレルギー・臨床免疫学会(CSACI)は、2012年の声明で、食物特異的IgG検査を食物アレルギーや食物不耐症の診断に使うことに懸念を示しています。食物へのIgGは、その食物に触れていることや、体が慣れていること(耐性)の目印と考えられ、健康な成人や子どもでも陽性が予想されるためです。不必要な食事制限や、生活の質の低下につながるおそれも指摘されています。
一方、下痢型の過敏性腸症候群の方に、IgG検査の結果に基づく除去食を12週間行ったところ、症状が改善したという報告もあります。ただし抄録では、治療前の状態との比較であり、除去食そのものの効果なのか、食事を見直したこと全体の影響なのかは区別できません。
動画では「除去する必要は一切ありません」とお話ししましたが、この記事では範囲を限定して書いています。血液検査や皮膚テスト、食物負荷試験などで医師が診断した食物アレルギー(即時型)は、別の話です。その場合は、医師の指示に従ってください。
動画では、消化器の学会や海外でも推奨されていないとお話ししました。国内外のどの学会の見解かは、現時点で確認できていません。そのため、この記事では上のCSACIの声明だけを紹介しています。
検査や商品を勧められて迷ったときは、お金や不安が先に動く前に、消化器内科で意見を聞いてみてください。保険診療で診てもらえる専門の医療機関に相談することは、大切な選択です。
過敏性腸症候群・機能性ディスペプシアとカンジダには、関係があるのですか?
関係がある可能性は指摘されていますが、現時点では、カンジダが原因だと証明された段階ではありません。過敏性腸症候群(ストレスで便秘や下痢をくり返す状態)や、機能性ディスペプシア(胃の不快感が続くのに、検査で原因が見つからない状態)の背景に、カンジダなど腸の真菌のバランスが関わる可能性は、今も研究されています。
動画で話したこと
過敏性腸症候群や機能性ディスペプシアの背景に、カンジダが増えている可能性はあります。ただし、いきなり抗真菌薬やサプリメントを使うのではなく、まず生活を整えることが大切です。
研究で分かっていること(確度:機序的仮説)
前述の総説では、腸の酵母と過敏性腸症候群との関連は「あり得るが、証明されていない」とされています。
また、下痢型の過敏性腸症候群の方と健康な人の便を比べた探索的な研究では、真菌の構成や、細菌と真菌の関係に違いがみられ、真菌の構成は症状と関連していました。ただし、これは症例対照研究(病気のある人とない人を比べる研究)であり、真菌の変化が原因なのか結果なのかは、この研究だけでは分かりません。
生活で整えることは何ですか?
特別なことではなく、次の4つを土台に整えていきます。お腹の状態を見ながら、無理のない範囲で続けてください。
- いろいろな食品をとる:アレルギーの有無とは関係なく、腸内環境を整えるために、食べられるものはしっかりとります。
- 睡眠をしっかりとる:睡眠不足が続くと、お腹の調子も乱れやすくなります。
- 抗菌薬や胃酸を抑える薬を、漫然と使い続けない:これらの薬を長く飲んでいる方は、自己判断で中止せず、処方した医師に「いまも必要か」を相談してください。
- ストレスを管理する:腸と脳は互いに影響し合っています(脳腸相関)。ストレスが腸に作用するパターンも多いのです。
この4つを整えてから、お腹の状態を見ていく。これが動画でいちばんお伝えしたかったことです。カンジダは異常なものではなく、多くの人の中にある菌ですので、「退治する」よりも、共生していく気持ちで生活を整えてみてください。
※効果には個人差があります。
呑気症のお腹の張りと、腸カンジダはどう関係しますか?
呑気症のお腹の張りは、腸カンジダとは別の原因で起きていると、当院では考えています。お腹の張り・げっぷ・ガスが止まらない症状は、「腸カンジダ」の説明とも重なるため、混同されやすいのです。
院の見解(確度:未検証)
当院では、お腹の張りは腸そのものの問題ではなく、斜角筋(首の横にある筋肉)や横隔膜(呼吸に使う筋肉)の緊張によって起こると考えて施術しています。動画では、肩の緊張をゆるめるだけでも、お腹の張りがだいぶ楽になる方がいるとお話ししました。これは院の見立てであり、研究で確かめられたものではありません。
横隔膜のしくみや、セルフケアの具体的な方法は、次の記事で詳しく説明しています。
こんなときは消化器内科へ
次のような症状があるときは、カンジダ以外の病気を調べる必要があります。自己判断で様子を見ず、消化器内科を受診してください。
- 便に血が混じる(血便)
- 理由のはっきりしない体重の減少が続く
- 粘液のような便が出る
- 強い腹痛、またはひどくなっていく腹痛がある
腹痛に粘液便が重なるような場合は、アメーバ性腸炎のような感染症など、別の原因が隠れていることもあります。これらは腸カンジダとは別に、医療機関で調べることが大切です。
お腹の張りやげっぷが続くのに、検査では大きな異常がないと言われた方は、生活の見直しとあわせて、東洋医学という選択肢もあります。原因不明と言われても、一人で抱えなくて大丈夫です。
よくある質問
便検査でカンジダが見つかったら、腸カンジダなのでしょうか?
いいえ、見つかっただけでは腸カンジダとは言えません。カンジダは健康な人の腸にもいる常在菌で、便から検出されること自体は珍しくありません。腸で増えて問題になっているかどうかは、症状の経過や、必要に応じて内視鏡で組織をとって調べる検査(生検)などをもとに、医師が総合的に判断します。
遅延型(IgG)食物アレルギー検査で陽性になった食品は、すべてやめたほうがよいですか?
陽性になった食品をすべて自己判断でやめることはおすすめしません。IgGは、その食品を食べていることを反映して陽性になりうるためです。食べる品目を減らしすぎると栄養が不足するおそれもあります。なお、医師が診断した食物アレルギー(即時型)は別の話ですので、その場合は医師の指示に従ってください。
カンジダは性感染症ですか?
腸にいるカンジダは常在菌であり、性感染症とは別の話です。名前から性感染症を連想される方が多いのですが、多くの人が持っている菌で、それ自体は特別なことではありません。性器のかゆみやおりものなどが心配な場合は、婦人科や皮膚科でご相談ください。
抗菌薬や胃酸を抑える薬を飲んでいます。やめたほうがよいですか?
自己判断でやめないでください。これらの薬は、病気の治療や症状の管理のために処方されています。長く飲み続けていて気になる場合は、いまの量や期間が適切かどうかを、処方した医師に相談してください。
腸カンジダ向けのサプリメントや抗真菌薬を、自分で始めてもよいですか?
自己判断で始めることはおすすめしません。まず生活を整え、それでも気になる症状が続くときは、消化器内科で相談してください。サプリメントや検査を勧められた場合も、同じように消化器内科で意見を聞くと安心です。
お腹の張りやげっぷが続くとき、まずどこを受診すればよいですか?
まずは消化器内科の受診をおすすめします。血便、体重の減少、粘液の混じる便、強い腹痛などがある場合は、早めに受診してください。検査で大きな異常がなかった場合は、生活の見直しや、当院のような東洋医学の視点も選択肢になります。
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監修
木もれび鍼灸院/ツボ塾 代表
弓削 周平(ゆげ しゅうへい)
- 鍼灸師(はり師・きゅう師)
- 日本東洋医学会会員
- 2002年 明治東洋医学院専門学校卒業
- 2011年 長春中医薬大学卒業(中医学士)
- 2014年 木もれび鍼灸院開業
参考文献
- Schulze J, Sonnenborn U.Yeasts in the gut: from commensals to infectious agents.Dtsch Arztebl Int.2009;106(51-52):837-42. https://doi.org/10.3238/arztebl.2009.0837
- Auchtung TA, Fofanova TY, Stewart CJ, et al.Investigating Colonization of the Healthy Adult Gastrointestinal Tract by Fungi.mSphere.2018;3(2). https://doi.org/10.1128/msphere.00092-18
- Carr S, Chan E, Lavine E, et al.CSACI Position statement on the testing of food-specific IgG.Allergy Asthma Clin Immunol.2012;8(1):12. https://doi.org/10.1186/1710-1492-8-12
- Guo H, Jiang T, Wang J, et al.The value of eliminating foods according to food-specific immunoglobulin G antibodies in irritable bowel syndrome with diarrhoea.J Int Med Res.2012;40(1):204-10. https://doi.org/10.1177/147323001204000121
- Hong G, Li Y, Yang M, et al.Gut fungal dysbiosis and altered bacterial-fungal interaction in patients with diarrhea-predominant irritable bowel syndrome: An explorative study.Neurogastroenterol Motil.2020;32(11):e13891. https://doi.org/10.1111/nmo.13891

