【呑気症】横隔膜との関係は?食道を締める「二重の締め具」のしくみ

【呑気症】横隔膜との関係は?食道を締める「二重の締め具」のしくみ 消化器

この記事の結論

呑気症と横隔膜は、食道と胃の境目で関わっています。この境目は、食道自身の筋肉(下部食道括約筋)と、その外側を取り巻く横隔膜の一部(横隔膜脚)という「二重の締め具」で閉じられていて、横隔膜脚は息を吸うときに強く働きます。ここまでは測定の研究で確かめられています。一方、浅い呼吸の癖でこの締め具が働きすぎ、空気が抜けにくくなるという流れは、院長の見解で、研究では確認できていません。あなたのせいではありません。ちゃんと理由があります。

この記事の対象者
げっぷ・お腹の張り・おならに悩み、「呑気症」と言われた方、あるいは検査で異常がないと言われた方に向けた記事です。症状の全体像は呑気症(空気嚥下症)の鍼灸治療について、横隔膜の緊張の見立てやセルフケア、当院の施術は【呑気症】根本治療法|横隔膜の緊張を解く4つのセルフケアと専門治療で解説しています。この記事では、その手前にある「食道と胃の境目のしくみ」に絞ります。ゲップが全く出せない方は、【逆行性輪状咽頭筋機能不全】呑気症とR-CPDの違い|原因とセルフケアもご覧ください。

この記事では、大阪の木もれび鍼灸院・院長 弓削周平(鍼灸師・臨床経験27年)が、動画で話した「呑気症と横隔膜の関係」を、これまでの研究と並べて解説します。主張には「確立した生理学」「機序的仮説」「経験的示唆」「未検証」の確度を添えています。

呑気症は病名ですか?診断名とはどんな関係ですか?

動画で話したこと

呑気症は病名ではなく俗称で、病院で「呑気症ですね」と言われても診断ではない、と説明しました。診断名にあたるのは、過敏性腸症候群や逆流性食道炎などです。呑気症は、お腹にガスがたまる、げっぷが止まらない、おならが多いという症状をまとめた呼び方で、当院では「お腹が張り、げっぷかおならを自分でコントロールしにくい方」を呑気症と定義しています。その中に、過敏性腸症候群ガス型、炎症のないタイプの逆流性食道炎、機能性ディスペプシアなどが入ると考えています。

研究で分かっていること

げっぷの医学的な解説では、げっぷを、空気が胃から上がってくる「胃性げっぷ」と、空気が食道で出入りする「胃上部げっぷ」に分けて考えます。この二つは、多くの場合、診察だけでも区別できるとされています(確立した知見)。

動画との違い
動画の「呑気症」は、げっぷ・ガス・おならをまとめた当院の定義です。研究の分類は「げっぷ」の分類なので、ものさしが違います。「呑気症」という言葉そのものの位置づけは、今回確認した論文の抄録には書かれていませんでした。診断名との関係の詳しい整理は【過敏性腸症候群ガス型】ゲップが出る・出ない、おならが出る・溜まる|4つのタイプで分類する方法をご覧ください。

食道と胃の境目は、どんな構造で閉じているのですか?

動画で話したこと

食道と胃の間には下部食道括約筋があり、その外側を横隔膜が取り巻く「二重構造」になっていると話しました。横隔膜は、背骨の付け根から食道の方へ向かって伸びるように付いていて、息を吸うと食道をぎゅっと締める、という説明です。

研究で分かっていること

食道と胃の境目の圧を立体的に測る検査では、下部食道括約筋の圧の上に、横隔膜脚に由来する偏った圧のピークが重なって記録されました。このピークは、息を吐くときより吸うときのほうが高いことも示されています(確立した生理学)。

たとえるなら、一つ目は食道自身が持つ「ベルト」で、いつも一定の張りで閉じています。二つ目は横隔膜の一部が外側から「手で押さえる」ように働くもので、息を吸うたびに追加で締まります。この記事では、この二つを合わせて「二重の締め具」と呼びます。

動画との違い
動画では「日本では名称がない」と話しましたが、研究の世界では「横隔膜脚(おうかくまくきゃく、crural diaphragm)」という名前で、測定や研究が行われています。

息を吸うと食道は締まるのですか?浅い呼吸の癖で締まりやすくなりますか?

動画で話したこと

息を吸うと食道が締まる構造があるため、ストレスで浅い呼吸が長く続くと、食道が締まる癖がつき、お腹に空気がたまりやすくなる、と説明しました。長年呑気症や機能性ディスペプシアに悩む方の背景に、この横隔膜の緊張があると考えています。

研究で分かっていること

逆流症の患者さんと、そうでない人を比べた測定研究では、息を吸ったときの境目の圧の上がり幅が、逆流症の患者さんのほうで小さい結果でした(観察研究で、原因と結果の順序は分かっていません)。 吸気で圧が上がる、という点は、前の節の研究とも合います。

整理すると、「息を吸うと横隔膜脚が働いて境目の圧が上がる」は確立した生理学です。「浅い呼吸の繰り返しで締まる癖がつき、空気が抜けにくくなる」は、院の見解で、機序的仮説の段階です。浅い呼吸が横隔膜脚の働きを変えるかどうかを直接調べた研究は、今回確認できた抄録にはありませんでした。

動画との違い
上の研究の対象は逆流症の患者さんで、呑気症の方ではありません。また、境目の圧が「上がりすぎる」方向を示した研究は、今回確認した範囲にはありませんでした。動画の「締まる癖」は、院長の臨床での見立てとして受け取ってください。

胃上部げっぷの研究では、空気はどこから来ると考えられていますか?

動画で話したこと

げっぷが止まらない、お腹が張る、おならが多いといった症状を、胃の炎症や自律神経ではなく、呼吸の筋肉である横隔膜の緊張として捉えている、と話しました。横隔膜は手では届かないため、当院では鍼で緩めるアプローチをとっています。

研究で分かっていること

胃上部げっぷは、胃から空気が上がってくる通常のげっぷとは違い、空気を食道に取り込んですぐ吐き出すもので、空気は胃ではなく食道から出入りすると説明されています。食道内の空気の出入りを測る検査で見分けられます。

胃上部げっぷの方を対象にした多施設のランダム化比較試験では、横隔膜呼吸(腹式呼吸)で症状が軽くなった人もいましたが、歌唱療法のほうが軽くなった人が多い結果でした。この抄録からは、何もしない場合との比較は分かりません(経験的示唆)。

動画との違い
動画ではガスがお腹にたまる流れで説明しましたが、胃上部げっぷの研究では、空気は胃ではなく食道に出入りするものとされています。お腹の張りやおならとの関係、横隔膜の動きが空気を吸い込む仕組みに関わるかどうかは、今回確認した抄録には書かれていませんでした。また、研究で比べられたのはご自身で行う呼吸の練習で、鍼で横隔膜を緩める方法の効果を調べた研究は確認できていません。横隔膜の緊張の見立てとセルフケア、当院の施術は、【呑気症】根本治療法|横隔膜の緊張を解く4つのセルフケアと専門治療と呑気症(空気嚥下症)の鍼灸治療についてにまとめています。

体格によって、反応に差はありますか?

当院の臨床では、体格によって鍼灸への反応に差があると感じています。痩せ型の方のほうが反応を感じやすく、体格が大きい方は反応が穏やかな傾向がある、というのが私の経験です(経験的示唆)。ただし、これは院内での印象で、研究で確かめたものではありません。同じ体格でも反応には個人差が大きいため、「自分は当てはまらない」と決めつけず、参考程度に受け取ってください。

こんなときは医療機関へ

次のような場合は、記事の内容より先に、消化器内科などの受診をおすすめします。

  • 体重が短期間に大きく減っている
  • 飲み込みにくい、食べ物がつかえる
  • 黒い便が出る、血を吐く、激しい腹痛がある
  • 胸の痛みや動悸を伴う

げっぷやお腹の張りの背景に、胃や食道、心臓などの病気が隠れていないかを確かめることは大切です。検査で異常がなく、症状だけが続くときは、一人で抱えなくて大丈夫です。当院では、横隔膜や肋骨まわりの状態を見ながら鍼灸を行っています。

呑気症の鍼灸治療について

げっぷやお腹の張りで、どこに相談すればよいか迷っている方は、まずお気軽にご連絡ください。

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よくある質問

呑気症は病院で診断される病名ですか?

呑気症は病名ではなく、げっぷが止まらない・お腹にガスがたまる・おならが多いといった症状をまとめた俗称として使われます。診断名は、過敏性腸症候群ガス型や逆流性食道炎、機能性ディスペプシアなど別にあります。症状が続くときは、まず消化器内科などで検査を受けることをおすすめします。

呑気症と横隔膜には、どんな関係がありますか?

食道と胃の境目は、食道自身の筋肉である下部食道括約筋と、その外側を取り巻く横隔膜(横隔膜脚)の二重の構造で閉じています。横隔膜脚は息を吸うときに強く働くことが、圧を測る研究で示されています。当院では、この部分の緊張が呑気症の症状に関わると考えていますが、その点を直接調べた研究は今回確認できていません。

「二重の締め具」とは何ですか?

食道と胃の境目を閉じている、下部食道括約筋と横隔膜脚の二つを、この記事ではたとえて「二重の締め具」と呼んでいます。前者は食道の筋肉で常に一定の張りを保ち、後者は横隔膜の一部で、息を吸うたびに外側から追加で締めます。

胃上部げっぷと、ふつうのげっぷはどう違いますか?

ふつうのげっぷは胃にたまった空気が上がってくるものです。胃上部げっぷは、空気を食道に取り込んですぐ吐き出すもので、胃から上がってくる空気ではないと説明されています。食道内の空気の出入りを測る検査で見分けられます。

横隔膜呼吸(腹式呼吸)でげっぷは減りますか?

胃上部げっぷの方を対象にした臨床試験では、横隔膜呼吸で症状が軽くなった人もいましたが、歌唱療法のほうが軽くなった人が多い結果でした。効果には個人差があり、一つの試験の結果なので、呼吸の練習は選択肢の一つとして考えてください。

呑気症で鍼灸を受けることはできますか?妊娠中でも大丈夫ですか?

消化器の病気が隠れていないか、医療機関で確認したうえでご相談ください。妊娠中の方は、施術の前に必ずお伝えください。体調や週数に合わせて、刺激の強さや使うツボを調整します。効果には個人差があります。

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監修

木もれび鍼灸院/ツボ塾 代表

弓削 周平(ゆげ しゅうへい)

保有資格
  • 鍼灸師(はり師・きゅう師)
  • 日本東洋医学会会員
経歴
  • 2002年 明治東洋医学院専門学校卒業
  • 2011年 長春中医薬大学卒業(中医学士)
  • 2014年 木もれび鍼灸院開業

参考文献

  1. Rangan V, Sheth T, Iturrino J, et al. Belching. J Clin Gastroenterol. 2021;56(1):36-40. DOI / PubMed
  2. Punkkinen J, Haak R, Kaartinen M, et al. Help from habit reversal for supragastric belching. Duodecim. 2016;132(22):2073-9. PubMed
  3. Kwiatek MA, Pandolfino JE, Kahrilas PJ. 3D-high resolution manometry of the esophagogastric junction. Neurogastroenterol Motil. 2011;23(11):e461-9. DOI / PubMed
  4. Pandolfino JE, Kim H, Ghosh SK, et al. High-Resolution Manometry of the EGJ: An Analysis of Crural Diaphragm Function in GERD. Am J Gastroenterol. 2007;102(5):1056-63. DOI / PubMed
  5. Shang H, Ma H, Xu Z, et al. Singing Therapy versus Diaphragmatic Breathing for Supragastric Belching: A Multicenter Randomized Controlled Trial. Clin Gastroenterol Hepatol. 2026. DOI / PubMed

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