【機能性ディスペプシア】若い女性に多い理由|二次性徴・痩せ・睡眠

【機能性ディスペプシア】若い女性に多い理由|二次性徴・痩せ・睡眠 消化器
【機能性ディスペプシア】若い女性に多い理由|二次性徴・痩せ・睡眠

この記事の結論

機能性ディスペプシア(FD)が若い女性に多い背景には、二次性徴(女性ホルモンの変化)・痩せ・睡眠不足の3つが考えられます。研究でもFDは女性に多く、低体重や睡眠の乱れと関連することが報告されています。ただし、どれも「関連」が分かっている段階で、原因と結果の順序まではまだ分かっていません。あなたのせいではありません。ちゃんと理由があります。

この記事の対象者
食べるとお腹が張る、吐き気がある、ゲップやおならが止まらない、体重が落ちてきた――そんな中高生〜20代の女性と、そのご家族に向けた記事です。症状の全体像は機能性ディスペプシアの症状ページをご覧ください。体重が短期間に大きく減っている、嘔吐が続くといった場合は、先に医療機関の受診をおすすめします(詳しくは後半に書きました)。

この記事では、大阪の木もれび鍼灸院・院長 弓削周平(鍼灸師・臨床経験27年)が、動画で話した「若い女性に多い3つの背景」を、これまでの研究と並べて解説します。主張には「確立した生理学」「機序的仮説」「経験的示唆」「未検証」の確度を添えています。

機能性ディスペプシアは若い女性に多いのですか?

動画で話したこと

当院では、機能性ディスペプシアやお腹の張り、吐き気などで来院する方が全体の約7割を占め、その中の約6割が中学生〜高校生ごろからの若い女性だと紹介しました。痩せ型で、同じような特徴を持つ人たちが一群としてたくさん悩んでいる、という実感です。

研究で分かっていること

機能性消化管疾患の性差をまとめた総説では、FDは男性より女性に多いと報告されています(確立した知見に近い)。 ただし、この総説は主に成人が対象で、10代の女性に特に多いかどうかは今回の検索では確認できませんでした。

当院の来院傾向は、あくまで一つの院で見えている景色です。それでも「女性に多い」という大きな方向は研究とも重なります。では、なぜ女性、特に若い女性なのか。動画では3つの背景を挙げました。

背景① 二次性徴は胃腸の症状と関係しますか?

動画で話したこと

二次性徴では、脳の下垂体から出る性腺刺激ホルモンの指令で卵巣からエストロゲン(女性ホルモン)が分泌され、体が女性らしく変化します。この大きな変化が「自分では気づかないストレス」になり、お腹の症状として出ることがあると説明しました。さらに骨盤や肋骨(ろっこつ)が広がることで横隔膜が緊張し、お腹の中の空気が抜けにくくなる、という臨床での見立てもお話ししました。

研究で分かっていること

大規模な調査で、女性は男性より多くの消化器症状を訴え、閉経前の女性は閉経後の女性より内臓の感じやすさが高い傾向がありました。研究者は、女性ホルモンが内臓の感じやすさを高める可能性を示唆しています(経験的示唆)。 ただしこれは成人の調査で、思春期の性ホルモンの変化と胃の症状を直接調べた研究は、今回の検索では確認できませんでした。

「ホルモンの変化が胃腸の感じやすさに影響する」という方向は、大人の研究からは支持されています。一方で、二次性徴そのものが胃の症状を起こすという機序は、動物研究も含めて今回の文献では確かめられておらず、機序的仮説の段階です。

動画との違い
動画で話した「骨盤・肋骨の広がり → 横隔膜の緊張 → 空気が抜けにくい」という流れは、今回の文献では裏づけを確認できませんでした。院長の臨床での見立てであり、未検証です。横隔膜と胃の症状の関係は、【機能性ディスペプシア】肋骨弓の角度が重要|横隔膜を緩める鍼灸治療で改善で詳しく解説しています。

背景② 痩せていると症状が出やすいのですか?

動画で話したこと

痩せている状態を「標準」と感じやすい環境で育ち、子どものころから体重制限や間違ったダイエットをしている人が多いと話しました。二次性徴期の女性には、脂肪とコレステロールがとても必要です。コレステロールは女性ホルモンの材料になるためです。また、日本人に多い「鉤状胃(こうじょうい)」という胃の形があり、痩せて内臓脂肪が少ないと、その胃が縦に伸びて下がり、胃下垂の形になって胃もたれや不快感が出やすくなる、という見立てもお伝えしました。鉤状胃は釣り針(鉤)のように曲がった胃の形で、それ自体は異常ではありません。

研究で分かっていること

一般の人を対象にした横断研究(ある時点の状態を調べる研究)では、FDのある人に低体重の人が多く、不安の有無を考慮しても関連が残りました。 また、成人を対象とした大規模なコホート研究では、女性で低体重の側と肥満の側の両方にFDが多いU字型の傾向がみられましたが、低体重の側の差は統計的にははっきりしませんでした。 痩せと症状の関連を示す結果はあるものの、強さは研究によって違います(経験的示唆)。

ここで大切なのは、「痩せたからFDになった」と「FDで食べられないから痩せた」のどちらもありうることです。これらの研究は順序までは示せません。コレステロールが性ホルモンの材料になることは、体の一般的な仕組み(確立した生理学)です。ただし、それが胃の症状にどうつながるかは別の話です。痩せと自律神経の関係は、痩せすぎと自律神経の不調も参考にしてください。

動画との違い
「鉤状胃は日本人に多い胃の形で、それ自体は異常ではない。ただし痩せ型では縦に伸びて下がり、胃下垂の形になりやすく、胃もたれが出やすい」という流れは、今回の文献では確認できませんでした(未検証)。院長の臨床での見立てとしてお読みください。

背景③ 睡眠不足は胃の症状に関わりますか?

動画で話したこと

二次性徴期は、睡眠がとても大切な時期だと話しました。女性ホルモンのエストロゲンは睡眠と連動して増えていくため、夜しっかり深く眠り、朝に太陽の光を浴びる習慣が必要だという考えです。細切れの睡眠ではなく、早めに眠って朝に起きるリズムを小中高の間に整えることをすすめました。

研究で分かっていること

FDのある人は、ない人より睡眠の質が悪く、症状が重い人ほど睡眠の問題も大きいと報告されています(経験的示唆)。 研究者も、睡眠の乱れが症状を引き起こすのかどうかは今後の課題としています。

つまり「胃の症状と睡眠の乱れが一緒に起きやすい」ことは研究でも見えています。眠れないから胃が悪くなるのか、胃が苦しくて眠れないのかは、まだ分かっていません。どちらの場合でも、睡眠を整えることは無理のない取り組みです。睡眠そのものの悩みは、【不眠症】|40代からの睡眠障害・起立性調節障害・夜間尿も完全解説も参考になります。

動画との違い
「エストロゲンの分泌が睡眠と連動する」「夜間に男性ホルモンが出る」といった内分泌の流れや、「何時に寝るのがよい」という具体的な時刻の根拠は、今回の文献では確認できませんでした(未検証)。研究で確認できたのは、FDと睡眠の乱れが関連するところまでです。

食べるのがつらいとき、どう食べればよいですか?

動画で話したこと

痩せて食道が過敏になると、小さな固いものでも吐き気が出ることがあります。噛むほど空気も飲み込みやすくなり、お腹が張ります。そこで、最初はゼリー飲料や医療機関で処方される栄養剤など、流動食に近いものから少しずつ摂る方法を紹介しました。アイスクリームなど食べられるものから増やしてかまいません。毎日続けると胃液や膵液、胆汁などの消化酵素が出やすくなり、少しずつ固形物が食べられるようになる、という経験的な見立てです。食べられるようになったら、魚や肉の脂、アボカド、オリーブオイルなど質のよい脂も大事にしてほしい、と話しました。

この食事の進め方は、今回の文献検索では研究による裏づけを確認していません(経験的示唆)。焦らず、ご本人が「これなら食べられる」と感じるものから始めてください。ご家族は「頑張って食べなさい」と励ますより、食べられるものを一緒に探す形が負担になりにくいと考えています。食べやすいものの選び方は吐き気・えずきがあるとき食べやすいもの|体験談から分かった3つのルールもご覧ください。

※効果には個人差があります。食事で強い吐き気が出る、飲み込みにくい場合は無理をせず、医療機関にご相談ください。

こんなときは医療機関へ

次のような場合は、記事のセルフケアより先に、消化器内科などの受診をおすすめします。

  • 体重が短期間に大きく減っている
  • 嘔吐が続く、水分も取れない
  • 黒い便が出る、血を吐く
  • 激しい腹痛がある、飲み込みにくい

無理なダイエットが背景にあり、食事への不安が強い場合は、摂食障害の可能性もあります。その場合は心療内科など専門機関への相談も大切です。「心の問題」と言われても、体の面に取り組めることは残っています。一人で抱えなくて大丈夫です。

当院では、横隔膜や肋骨まわりの状態を見ながら鍼灸を行っています。

機能性ディスペプシアの鍼灸について

吐き気やお腹の張りで、どこに相談すればよいか迷っている方は、まずお気軽にご連絡ください。

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よくある質問

機能性ディスペプシアは本当に若い女性に多いのですか?

機能性ディスペプシア(FD)は、研究の総説でも男性より女性に多いと報告されています。ただし「10代の女性に特に多い」と直接示した研究は、今回の文献検索では確認できませんでした。動画では、当院の患者さんの傾向として若い女性が多いと紹介しましたが、これは一つの院の来院傾向であり、一般の有病率ではありません。

二次性徴と胃腸の症状は関係がありますか?

成人の研究では、閉経前の女性は閉経後の女性より内臓の感じやすさが高い傾向があり、女性ホルモンが関わる可能性が示されています。一方、思春期の性ホルモンの変化と胃の症状を直接調べた研究は、今回の検索では確認できませんでした。現時点では「関わっている可能性がある」という段階です。

痩せていると機能性ディスペプシアになりやすいのですか?

低体重(BMI18.5未満)の人にFDが多いという横断研究があり、不安の有無を考慮しても関連が残りました。ただし横断研究は関連しか示せません。食べられないために痩せた可能性もあり、痩せが原因とは言い切れません。

睡眠を整えれば胃の症状は軽くなりますか?

FDのある人は睡眠の質が悪い傾向があり、症状が重いほど睡眠の問題も大きいと報告されています。ただし、睡眠不足が先なのか胃の症状が先なのかは分かっていません。睡眠を整えると胃の症状が軽くなることを示した研究も、今回は確認できませんでした。睡眠を整えること自体は体の土台づくりとして無理のない取り組みですが、効果には個人差があります。

吐き気が強くて固形物が食べられないとき、どうすればよいですか?

動画では、噛むほど空気を飲み込みやすく吐き気が出ることがあるため、ゼリー飲料や医療機関で処方される栄養剤など流動食に近いものから少しずつ摂る方法を紹介しました。アイスクリームなど食べられるものから増やしていく考え方です。これは臨床での経験にもとづく方法で、研究で確かめられたものではありません。体重が減り続ける、嘔吐が続くといった場合は、早めに医療機関へご相談ください。

「心の問題」と言われました。体の問題ではないのですか?

心理的な要因が関わることはあります。ただ研究では、低体重とFDの関連は不安の有無を考慮しても残りました。心と体のどちらか一方ではなく、両方が重なっていると考えるほうが実態に近いと思われます。食事や睡眠、体の使い方といった身体面にも取り組める点がある、とお伝えしたいと思います。

どんなときに病院を受診すべきですか?

体重が短期間に大きく減る、嘔吐が続く、水分も取れない、黒い便や血を吐く、激しい腹痛、飲み込みにくさがある場合は、早めに消化器内科などを受診してください。無理なダイエットが背景にあり、食事への不安が強い場合は、摂食障害の可能性もあるため、心療内科などの専門機関への相談も大切です。

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監修

木もれび鍼灸院/ツボ塾 代表

弓削 周平(ゆげ しゅうへい)

保有資格
  • 鍼灸師(はり師・きゅう師)
  • 日本東洋医学会会員
経歴
  • 2002年 明治東洋医学院専門学校卒業
  • 2011年 長春中医薬大学卒業(中医学士)
  • 2014年 木もれび鍼灸院開業

参考文献

  1. Narayanan SP, Anderson B, Bharucha AE.Sex- and Gender-Related Differences in Common Functional Gastroenterologic Disorders.Mayo Clin Proc.2021;96(4):1071-1089. DOI / PubMed
  2. Sarnoff RP, Hreinsson JP, Kim J, et al.Sex Differences, Menses‐Related Symptoms and Menopause in Disorders of Gut–Brain Interaction.Neurogastroenterol Motil.2025;37(2):e14977. DOI / PubMed
  3. Beh KH, Chuah KH, Rappek NAM, et al.The association of body mass index with functional dyspepsia is independent of psychological morbidity: A cross-sectional study.PLoS One.2021;16(1):e0245511. DOI / PubMed
  4. Le Pluart D, Sabaté JM, Bouchoucha M, et al.Functional gastrointestinal disorders in 35,447 adults and their association with body mass index.Aliment Pharmacol Ther.2015;41(8):758-67. DOI / PubMed
  5. Lacy BE, Everhart K, Crowell MD.Functional Dyspepsia Is Associated With Sleep Disorders.Clin Gastroenterol Hepatol.2011;9(5):410-4. DOI / PubMed

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