こんなお悩みありませんか?
漢方薬を処方されて試してみたけれど、思ったほど効果を感じない――機能性ディスペプシアでそんな経験をされた方は少なくありません。実は漢方薬は、病名ではなく一人ひとりの体質(証)に合わせて選ぶことが本来のセオリーです。
動画解説
今回の動画では、機能性ディスペプシアに関わる6つの体質(証)と、それぞれに対応する代表的な漢方薬を解説しています。この記事では、動画の内容をさらに詳しく整理してお伝えします。
なぜこの症状が起こるのか?その根本原因
現代医学から見た原因
機能性ディスペプシアは、胃カメラや血液検査で明らかな異常が見つからないにもかかわらず、胃もたれや吐き気、げっぷなどの症状が続く状態です。痩せ型の方や女性、ストレスを抱えている方に多いとされ、消化器そのものの病気というより自律神経系の不調に近いと考えられているため、一般的な西洋薬が効きにくいという特徴があります。
東洋医学から見た根本原因
東洋医学では、機能性ディスペプシアという病名そのものに漢方薬を処方するのではなく、患者さんの体質・感情面・環境・生まれ育ちなどを総合的に見て「証」を決定し、その証に応じて漢方薬を選びます。しかし、日本の医療は西洋医学が中心であるため、大学で体系的に漢方を学ぶ機会は少なく、証を見極めずに病名だけで漢方薬が処方されてしまうケースも見られます。その場合、副作用の少ない安全な漢方薬が選ばれやすい一方で、改善率が伸び悩むこともあります。
機能性ディスペプシアに関わる6つの証と漢方薬
①脾気虚(ひききょ)
もともと痩せ型で胃腸が丈夫でなく、過労やストレスが長く続いたことで胃腸がさらに弱ってしまった状態です。胃もたれ、みぞおちの膨満感、食べてもすぐお腹がいっぱいになるといった症状が特徴です。日本のエキス剤では、胃の排出機能を高める六君子湯、胃を温める人参湯(冷え性を伴う方向け)、胃腸機能全般の低下に用いる四君子湯、心の機能をサポートする帰脾湯などが候補になります。比較的安全性が高く、機能性ディスペプシアで最も多く用いられる処方群です。
②肝気犯胃(かんきはんい)
ストレスに対して「肝」が頑張って耐え続けた結果、隣接する胃に影響が及んでしまう状態です。胃もたれや吐き気、胸の落ち着きのなさ(心煩)、舌が赤く舌苔が黄色いといった特徴があり、休日より仕事のある日に明らかに症状が悪化する傾向があります。代表的な漢方薬は大柴胡湯です。ただし取り扱いに注意が必要な漢方薬で、薬局・薬店では販売されておらず、漢方外来や漢方薬局で専門家の判断のもと処方されるものです。まれに(頻度としては1万分の1程度)間質性肺炎という副反応が報告されているため、自己判断での使用は避けてください。
③胃陰虚(いいんきょ)
胃そのものの働き(蠕動運動)が低下している状態で、お腹を揺らすとポチャポチャと音がする、水を飲んでも胃を通過しにくいといった特徴があります。ピロリ菌感染や萎縮性胃炎を伴うこともあり、精神面よりも内臓そのものの問題であるケースが多いため、西洋薬の方が効果を感じやすい場合もあります。漢方薬では平胃散などの胃薬系が用いられます。
④肝鬱気滞(かんうつきたい)
原因は②の肝気犯胃と同じくストレスですが、症状の中心が胃ではなく精神面(抑うつ、不眠、不安感、場合によっては起立性調節障害)に現れる点が異なります。代表的な漢方薬は、ストレス対応の定番である四逆散と、強い疲労感を伴う衰弱状態に用いる補中益気湯です。胃の症状よりも精神面から先に整えることで、結果的に胃の調子も改善していくことがあります。
⑤湿熱(しつねつ)
体に余分な水分(むくみ)がこもり、さらに熱がこもっている状態です。暴飲暴食、刺激物やアルコールの摂りすぎ、加齢や生活習慣による腎機能の低下などが背景にあり、体質というより生活習慣病に近い性質を持ちます。膨満感、吐き気、体の熱感、呑気症などの症状が特徴で、血液検査や胃カメラで何らかの所見(逆流性食道炎など)が出やすい傾向があります。
⑥胃寒証(いかんしょう)
ビールや冷たい飲み物、カフェインの摂りすぎによって胃が冷え、血行不良を起こしている状態です。ピロリ菌由来ではない萎縮性胃炎に近い所見が見られることもあります。胃痛、胸焼け、胃のこわばりが主な症状で、胃を温める漢方薬が用いられます。
このほかにも、証に完全にとらわれず、喉のつまりに用いる半夏厚朴湯や、胃のムカムカ・胃痛に用いる安中散など、症状に応じて選択される漢方薬もあります。機能性ディスペプシアという診断名は、あくまで症状の呼び名にすぎず、呑気症や過敏性腸症候群、逆流性食道炎などと症状が重なることも多いためです。
症状改善への具体的なアプローチ
専門的な鍼灸治療のアプローチ
木もれび鍼灸院では、機能性ディスペプシアの主な原因はストレスであると考えていますが、そのストレスと胃の症状の間に「横隔膜の緊張」が介在していると捉えています。緊張状態が続くと呼吸が浅くなり、これが横隔膜の緊張につながることで、胃もたれや膨満感が起こりやすくなるという考え方です。
そのため当院で処方が検討される場合、一般的によく使われる六君子湯や四逆散が効きにくい方も少なくありません。実際に当院で大柴胡湯が処方されるケースはほとんどなく、六君子湯や半夏厚朴湯が使われることが多い印象です。漢方薬だけで改善が難しい場合は、横隔膜の緊張を緩める鍼灸治療を並行して検討していただくことをおすすめしています。
研究における位置づけについて
横隔膜の運動を司る横隔神経は、頸部で迷走神経と直接吻合していることが解剖学的に確認されており、呼吸と自律神経のつながりそのものは医学的に裏付けられています。一方で、「横隔膜の緊張がストレス性の胃の不調を引き起こす」という臨床的な因果関係については、現時点では合理的な機序仮説の段階であり、確立された定説とまでは言えません。当院の施術は、こうした呼吸・自律神経・消化管機能のつながりを踏まえたアプローチとしてご理解ください。
治療の流れ
問診で体質や生活背景、ストレスの状況を詳しくお伺いした後、脈診・腹診で証を見極め、横隔膜への施術を含めた治療プランをご提案します。漢方薬との併用についてもご相談いただけます。
患者様からよくいただくご質問
Q1. 病院で処方された漢方薬が効きませんでした。他の漢方薬に変えれば良くなりますか?
証が合っていない可能性があります。漢方専門の外来や薬局で体質を見極めてもらうこと、また当院のように横隔膜へのアプローチを併用することも選択肢になります。
Q2. 大柴胡湯は自分で薬局で買って試せますか?
大柴胡湯は取り扱いに注意が必要な漢方薬で、薬局・薬店では販売されていません。必ず漢方外来や漢方薬局で専門家の判断のもと処方を受けてください。
Q3. 漢方薬と鍼灸、どちらを先に試すべきですか?
どちらか一方でなければならないわけではありません。まずは体質(証)に合った漢方薬を専門家に相談しつつ、改善が難しい場合は横隔膜への鍼灸治療も候補としてご検討ください。
まとめ:健やかな毎日を取り戻すために
機能性ディスペプシアの漢方薬は、病名ではなく体質(証)によって大きく異なります。同じ症状でも、脾気虚・肝気犯胃・胃陰虚・肝鬱気滞・湿熱・胃寒証のいずれに当てはまるかで、選ぶべき漢方薬は変わってきます。ご自身の体質を見極めることが、遠回りのようで一番の近道です。
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