嚥下障害とは、ものを飲み込む動き(嚥下運動)が、体の構造の異常(器質的)や働きの異常(機能的)によって妨げられ、飲み込みにくさやつかえ感が起こる状態をいいます。「ものが飲みこみにくい」と感じる口腔・咽頭性と、「ものがつかえる」と感じる食道性に、大きく分けられます。診断には問診が重要で、症状があっても原因となる疾患がない場合もあるとされています。
- 飲み込もうとすると、のどや胸でつかえる感じがする
- 食べ物がのどを通りにくく、食事に時間がかかる
- 食事のたびに、つかえないかと心配になる
- 胸のあたりに、つかえ感や痛みが続いている
- 病院で検査を受けたが、異常はないと言われた
当院にも、こうした嚥下障害のお悩みでご相談に来られる方がいます。
検査を受けても、つかえの原因となる病気が見つからない。それでも、飲み込みにくさやつかえ感は続いている。そんな方も多いのではないでしょうか。あなたのせいではありません。一人で抱えなくて大丈夫です。
嚥下障害のタイプ
- ものが飲みこみにくい(口腔・咽頭性)
- 口の中からのどにかけての段階で、飲み込む動きがうまくいかないと感じる形です。
- ものがつかえる(食道性)
- 飲み込んだあと、食道を通る途中でつかえると感じる形です。主に固形物でつかえる場合と、固形物でも流動物(飲み物)でもつかえる場合があります。
- 症状があっても、原因となる病気が見つからない
- 診断には問診が重要ですが、症状があっても原因となる疾患がない場合もあるとされています。
そこで本記事では、嚥下障害のお悩みについて、まず西洋医学での原因の分類を整理し、そのうえで東洋医学の視点から解説します。飲み込みにくさやつかえ感とのつきあい方を考える助けになれば幸いです。
嚥下障害でお困りならば東洋医学専門の鍼灸院へ
大阪の鍼灸院
嚥下障害の症状

嚥下障害の主な症状は以下のとおりです。
- ものが飲みこみにくい
- ものがつかえる
- 主に固形物がつかえる
- 固形物だけでなく、流動物(飲み物)もつかえる
- 胸の痛み、胸のつかえ感
- 食べたものが戻ってくる(逆流)
- 冷たい飲み物や緊張で、症状が強まる(食道アカラシアの場合)
東洋医学では、飲み込みにくさとつかえを「噎膈」と呼びます。「噎」は食べ物を飲み込みにくいこと、「膈」は飲食が胸のあたりでふさがることを指します。噎だけが起こることもあれば、膈の前ぶれとして現れることもあるため、あわせて噎膈と呼ばれます。
症状が重い方ですと
- 寝ている間に、食道にたまった食べ物が逆流する
- 逆流したものを誤嚥して、肺炎を起こす
- 食事がとれず、体重が減る
といった症状がある場合もあります。これらは、主に食道アカラシアという病気で知られている経過です。このような症状があるときは、早めに医療機関を受診してください。
食事は毎日のことです。飲み込むたびにつかえないかと身構えてしまい、食事が楽しめなくなったり、人との会食をためらったりする方もいらっしゃいます。周りからは見えにくいつらさだからこそ、その負担は非常に大きいと思います。
嚥下障害の主な原因

西洋医学の観点からは、嚥下障害は、飲み込む動きが体の構造や働きの異常によって妨げられて生じるとされています。症状の感じ方によって、「ものが飲みこみにくい」口腔・咽頭性と、「ものがつかえる」食道性に大きく分けられ、それぞれに考えられる病気が異なります。
ものが飲みこみにくい場合(口腔・咽頭性)
口からのどにかけての段階で起こるタイプです。原因は、構造の異常(構造性)、神経の異常(神経原性)、筋肉の異常(筋原性)に分けられます。主な病気には次のようなものがあります。
- 構造性:Zenker(ツェンカー)憩室
- 構造性:口腔・咽頭癌
- 神経原性:脳血管障害
- 神経原性:Parkinson(パーキンソン)症候群
- 神経原性:筋萎縮性側索硬化症
- 筋原性:重症筋無力症
- 筋原性:多発性筋炎/皮膚筋炎
ものがつかえる場合(食道性)
食道を通る段階で起こるタイプです。主に固形物がつかえる場合と、固形物でも流動物でもつかえる場合に分けられます。
- 主に固形物:食道癌
- 主に固形物:胃癌
- 主に固形物:食道裂孔ヘルニア
- 固形物または流動物:食道アカラシア
- 固形物または流動物:強皮症
声のかすれやむせを伴う場合(反回神経麻痺)
声帯の動きなどを担う「反回神経」のまひも、原因の一つとしてあげられています。まひが起こると、嗄声(声のかすれ)、誤嚥、呼吸困難が起こるとされています。呼吸困難は、特に左右両側の反回神経がまひした場合に起こります。まひの原因としては、手術による切断、腫瘍などによる圧迫・浸潤(入りこむこと)、気管内挿管や特発性(はっきりした原因が見当たらないもの)などがあげられています。
反回神経麻痺は、当院では施術の対象としていません。声のかすれやむせを伴うときは、まず耳鼻咽喉科などの医療機関を受診してください。声のかすれについては、嗄声のページもご覧ください。
食道アカラシア
食道アカラシアは、食道の壁の中にある神経のネットワーク(アウエルバッハ神経叢)が、あとから変性・消失することで起こるとされる病気です。その結果、食べ物を送り出す食道の動き(蠕動運動)が失われ、食道と胃のつなぎ目にある筋肉(下部食道括約筋、LES)がゆるみにくくなって、食べ物が通りにくくなります。成人に多くみられますが、発症する年齢は幅広く、比較的まれな病気です。経過は長く、生命予後は良好とされていますが、誤嚥性肺炎や食道癌の合併に注意が必要です。
数年前からの嚥下障害、胸の痛み、食べ物の逆流がみられ、冷たい飲み物やストレスで強まるとされています。食道アカラシアの逆流は、逆流性食道炎(GERD)の逆流とは異なり、胃酸を含まないとされています。逆流性食道炎については、逆流性食道炎のページをご覧ください。
食道アカラシアの治療は、医療機関でLESをゆるめる治療が基本です。薬物療法、バルーン拡張術、経口内視鏡的筋層切開術(POEM)、外科的治療などがあります。鍼灸は、これらの治療の代わりになるものではありません。
次のような嚥下障害は、まず医療機関(消化器内科・耳鼻咽喉科など)を受診してください
- 中年以上で、飲み込みにくさが出てきたとき(東洋医学の教科書『针灸治疗学』の噎膈の項でも、中年以上の患者では癌の可能性を考えるよう書かれています。癌など悪性の病気がないか、まず医療機関で確認してください)
- 食道アカラシアと診断されている、または疑われるとき(食道癌の合併に注意が必要で、内視鏡検査による定期的な確認が必要とされています)
- 寝ている間に食べ物が逆流してむせる、誤嚥による肺炎が疑われるとき
- 食事がとれず、体重が減ってきたとき
- 声のかすれやむせを伴うとき(反回神経麻痺の可能性があります)
まず医療機関で原因を確認したうえで、鍼灸をご検討ください。当院では施術前の問診でこうしたサインがないかを確認し、必要な場合は医療機関の受診をおすすめしています。
当院がご相談に応じるのは、次の2つです。
- 医療機関で検査を受けても、嚥下障害の原因となる病気が見つからない、飲み込みにくさやつかえ感
- 食道アカラシアの方の、医療機関での治療と並行した、体質の面でのご相談
食道癌や噴門部の癌など、悪性の病気が疑われる場合は、施術の対象外です。医療機関での確認と治療を優先してください。
飲み込みにくさ・つかえ感に、東洋医学ができること

嚥下障害の治療とのつきあい方
嚥下障害の治療は、原因に応じて医療機関で行われます。治療を受けている方は、自己判断で中断しないでください。
一方で、
- 検査で病気が見つからないのに、飲み込みにくさやつかえ感が続く
- 気持ちが張りつめたり、思い悩んだりすると、つかえ感が気になる
- 食道アカラシアの治療を受けながら、体質の面でも整えたい
- 嚥下障害以外の不調も残ったまま
といったご相談に応じています。医療機関での確認・治療を受けながら、つかえ感を起こしにくい体づくりを並行して進めることが大切です。
東洋医学で内側から体を整える

東洋医学では、嚥下障害だけに着目するのではなく、嚥下障害と一緒に起きている下記のような症状にも目を配り、全身の状態をチェックします。
- 胸のつかえ感
- 胸の痛み
- げっぷ
- しゃっくり
- 痰が多い、のどに痰がからむ
- 食欲がない
- やせてきた
- 便秘
- 息切れ
- 冷え
東洋医学では嚥下障害を、のどや食道だけの問題ではなく、体の内側のバランスの乱れのあらわれと考えます。全身の調子を整えることで、つかえ感を起こしにくい体を目指していくのが東洋医学でのやり方です。医療機関で検査を受けても原因となる病気が見つからない方や、治療を受けていても体質の面で不調が残っている方にも、東洋医学ならではの視点からご提案ができます。
木もれび鍼灸院での施術の特徴
続けて、木もれび鍼灸院での施術についてくわしくご紹介します。

まずは、「四診」とよばれる東洋医学の伝統的な方法で、徹底的なカウンセリングを実施し、全身の状態を把握します。
四診とは、
- 視覚を通してチェックする「望診」
- 聴覚や嗅覚でチェックする「聞診」
- 問いかけと応答によりチェックする「問診」
- 脈や腹を診てチェックする「切診」
からなります。
嚥下障害の場合は、つかえを感じるタイミング、固形物と飲み物のどちらでつかえるか、胸の痛みや逆流の有無、食欲、これまでの食の好みやお酒の飲み方、気持ちの面で思い当たるきっかけもくわしくうかがいます。
嚥下障害を五臓の視点からみる

東洋医学の教科書『针灸治疗学』では、飲み込みにくさとつかえを「噎膈」としてまとめています。この教科書は、噎膈に近い現代の病気として、噴門痙攣、食道炎、食道憩室、食道癌、噴門癌、食道の機能性疾患などをあげています。ただし、噎膈が現代のこれらの病名と同じだという意味ではありません。
東洋医学では、
- 思い悩みが続いて起こる嚥下障害は「脾」の不調
- 気持ちが落ち込み、ふさぎこんで起こる嚥下障害は「肝」の不調
が原因と判断し施術をしています。(脾と肝は、西洋医学の脾臓・肝臓とは別物です。)
1つずつ解説していきます。
「脾」が原因の場合
「脾」は、食べ物から体のエネルギーや潤いをつくり、全身に巡らせる働きを担っています。思い悩みが続くと、脾の働きが滞り、潤いがうまく巡らなくなります。すると、体の中に「痰」(余分な水分が固まったもの)が生じ、のどや食道にとどまって、つかえ感につながると考えます。
嚥下障害以外の症状として、
- 食欲がない
- 痰が多い、のどに痰がからむ
- げっぷ、しゃっくり
- 胸のつかえ感
- お腹の張り
- 疲れやすい
などの症状が多くみられます。
「肝」が原因の場合
「肝」は、気(体を巡るエネルギー)の流れをなめらかにする働きを担っています。気持ちが落ち込み、ふさぎこむ状態が続くと、気の流れが滞り、血のめぐりも悪くなります。この血の滞り(「瘀」)が、のどや食道のつかえにつながると考えます。
嚥下障害以外の症状として、
- 胸のつかえ感
- 胸の痛み
- 気持ちの落ち込み
- イライラ
- ため息が多い
- 脇腹の張り
などの症状が多くみられます。
また、辛いものや熱いものの食べすぎ、お酒の飲みすぎが続くと、体の中に熱がこもって潤いを傷め、つかえ感に関わると考えます。
脾と肝の両方が関わっている方も少なくありません。四診で全身の状態をていねいに見極め、脾の働きを整える、肝の気の流れを整えるなど、その方に合った施術を行います。
当院では「鍼で嚥下障害が治る」とはお伝えしていません。飲み込みにくさやつかえ感の背景にある体質の面から、全身の状態を整えることを目指しています。
一人ひとりの体の状態に合わせて鍼灸によるツボの刺激をはじめ、
- 薬膳(食養生)
- 生活習慣のアドバイス
などを組み合わせ、体の機能を高めていくのが東洋医学です。ですので、つかえ感の背景にある体質の面に取り組むとともに、様々な不調にも目を配っていきます。
中国の中医薬大学を卒業した鍼灸師

木もれび鍼灸院では、中国の中医薬大学を卒業した鍼灸師が施術を行います。幅広い知識と確かな技術で、的確なケアをしていきます。
また、ハリやもぐさなど使用する道具も、体にやさしいものを厳選。お客様の不調にしっかりとアプローチできる施術を行っています。
東洋医学の施術を初めて受けられる方も、安心していらしてください。
患者さまからの喜びの声

のどの不調(エヘン虫)
のどの不調(エヘン虫)で半年以上続いていました。治まってはいませんが、以前よりはましになりました。運動と食事改善をし、様子をみていこうと思います。
※ご本人の感想を一部編集・要約して掲載しています。感じ方や経過には個人差があり、同様の結果を保証するものではありません。
※口コミは、ご本人が記された症状についての声で、嚥下障害についての声ではありません。
おわりに
今回は嚥下障害についてお話させていただきました。
飲み込みにくさやつかえ感が続いて、不安を抱えている方も、一人で抱えなくて大丈夫です。まずは医療機関で、原因となる病気がないかを確認してください。そのうえで、東洋医学を専門とする木もれび鍼灸院では、のどや食道だけでなく全身の状態を診ることで、体質の面からお力になれることがあると考えています。
今現在、飲み込みにくさやつかえ感でお悩みの方は、ぜひ当院へご相談ください。つかえ感を起こしにくい体づくりを、医療機関での治療と並行してサポートさせていただきます。
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参考資料
- 医療情報科学研究所 編.病気がみえる vol.1 消化器 第5版.メディックメディア,2016(2017年第4刷).p.48-51(食道アカラシア)ほか(嚥下障害の鑑別)
- 医療情報科学研究所 編.病気がみえる vol.7 脳・神経 第1版.メディックメディア,2011.p.239(反回神経について)
- 杨长森 主编.针灸治疗学(1.9 噎膈).上海科学技术出版社,1985(2021年第28次印刷).※中国語の教科書。本文の東洋医学の解説は意訳して使用しています
当院の技術は
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※全ての方に施術による効果を保証するものではありません。
施術効果には個人差があり、症状や体質、経過によって異なる場合があります。
